190913日本金属学会 SDGs に向けた材料学の転換

SDGs に向けた材料学の転換
A shift of material science and technology toward SDGs
サステイナビリティ技術設計機構 ○原田幸明
Sustainability Design Institute, Kohmei HALADA

【緒言】SDGs とはsustainable development goals の略で2015 年の国連サミットで採択さ
れた国際目標であり、わが国でも政府はもとより多くの企業や団体がこの目標の実現を掲げ
ている。材料学が技術と学術の側面を持ち、その技術の側面が材料として「使われる」こと
を意識するならば、このSDGs に対して材料技術がどのような貢献を行うことができるかを
問うことが必要になる。また学術としての材料科学の視点からも、材料技術が展開していく
上でその基礎となる学理が新たな真理探究の課題となることを意識する必要がある。本稿で
はSDGs にかかわる大きな地球規模の課題としての①温室効果ガスの低減と②資源効率の改
善について材料学が立ち向かう課題を検討する。
【温室効果ガス低減】SDGs と同じく2015 年に制定されたパリ協定は、「世界の平均気温の
上昇を産業革命以前に対して2℃未満に抑える」ことを取り決めた。これは今世紀の中盤ま
でに温室効果ガスの発生を実質ゼロ排出することに相当すると地球環境学的立場からシミ
ュレーションされ、我が国もそれに向けて2030 年までに26%の削減を掲げていたが、今年
「パリ協定長期成長戦略」において2050 年までに80%の削減を掲げている。この削減量は
は現在のCO2 発生量に相当すると、製造部門と運輸部門としてエネルギー転換部門を合わせ
た比率の近く、日本の産業構造を転換させることを意味している。
「パリ協定長期成長戦略」ではイノベーションがことさら強調されており、CCS・CCU/カ
ーボンリサイクル、水素社会の実現、ゼロカーボン・スチールへの挑戦、人工光合成などが
並んでいる。これらのイノベーションへの期待はJST やNEDO 等の施策として展開されるこ
とが予想されるが、材料性能が向上すれば製品性能そしてCO2 削減効果が増大するというよ
うな漸次改善的な課題ではなく、根本的なシステム転換に不可欠な材料技術として求められ
ることになるだろう。さらにこれらがSociety5.0 と関連して提起されていることにも注意
すべきである。そこでは、AI・ロボット、設計最適化、IoT 等が強調されており、材料技術
がそのような展開のネックをどのように形成しているかをよく調査する必要がある。
【資源効率】図に2100 年の資源需要予測をそれぞれの金属の埋蔵量を1 として表した。現
有埋蔵量だけでは到底需要を賄えない。資源の循環利用が必然となる時代が来る。そのよう
ななかで展開しているのがサーキュラー・エコノミーである。そこでは残存価値の徹底利用
が追及され、資源価値のみを循環させるリサイクルに頼るのではなくリマニュファクチャリ
ングやリファービッシュなどが求められる。材料には高機能だけでなく信頼性や寿命予測、寿
命延長などが問われてくる。これに応える材料の医者的技術やそれを支える劣化の科学が求
められる。

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