「ああ勘違い2:欧州の戦略は『理想と規制』」 原田幸明氏 2023 8/1

コラム紹介

2023 8/1  「ああ勘違い2:欧州の戦略は『理想と規制』」

原田幸明氏  物質材料研究機構名誉研究員・サーキュラーエコノミー&広域マルチバリュー循環研究会代表

 

ついにですね、談論風爽、seasonも14に突入いたしました。
それで、後で皆さん、ファイルを送っていただけると思いますけど、

一応、シーズン13のやつをですね、こういう形でまとめておりますし、
また適当にですね、一応、一番最初の部分に、「何を」「どういう話だったんだろう」っていうふうなやつをですね、私なりに考えて、付けておきました。
人によって付け方はいろいろ違うと思いますけれど、それで全体の傾向を見ていただけたらな、というふうに思っている次第です。
これはもう、あと話、入りません、っていうか、これ全部総括してやろうかと思ったんですけれど、
この間にいろいろ、話しているようなことがあってですね、もう少しこれ、深く話したいなということで、タイトル、こちらの方になりました。

[ああ勘違いⅡ「欧州の戦略は理想と規制」]
っていうふうなですね、”ああ勘違い”シリーズ。
「ああ勘違いⅠ」っていうのはですね、要するに、”「インベンション」と「イノベーション」の勘違い”、というのをやったと思うんですけれど、
特にですね、ちょっとこの前、ある学会の会議に出たときに、”欧州は規制だ、規制だ”、って、アカデミーの方々が全部言うんですよね。
”ちょっとこれやばいんじゃないかな”、と思いまして、ちょっとこれまとめてみました。

その前に、実はですね、この前シーズン13をやってるときの5月にですね、サーキュラーエコノミーマルチバリュー循環研究会の総会があって、そのときにこれはちょっと言ったんで、皆さん、参加された方は覚えている方もいると思いますけれど、
この、”皆さんどうでしょうか?”、と。

・「資源の枯渇の回避」は物質循環の重要なモチベーションである。
〇か✕か⁉

・環境問題は「正義」であり、「そのためには企業は制約を受けるべき」である。
〇か✕か⁉

・「外部経済」だった環境問題を「内部経済」に取り込んで「責任」を果たさなければいけない。
〇か✕か⁉

・サーキュラーエコノミーへの移行の鍵を握るのは、「静脈産業」もしくは「動静連携」である。
〇か✕か⁉

・サーキュラーエコノミーに移行するには「消費者の行動変容」が不可欠である。
〇か✕か⁉

・サーキュラーエコノミーで「循環」はできるが、「デカップリング」まではできない。
〇か✕か⁉

ここまで行って、さらに今回もう一個付け加えました。

・欧州の戦略は「理想と規制」であり、世界をリードすることである。
〇か✕か⁉

これ、やってるとキリがないので、言いますと、
”私はこれ全部 ✕ だと思ってます”。はい。

特にですね、そういう意味で、この辺、ちょっとサーキュラーエコノミー広域マルチバリュー循環研究会の総会で聴かれた方にはちょっとだぶっていると思いますけれど、
やはり、この辺重要なので、もういっぺんちょっとやってしまいたいと思います。
まず、例えば、今、欧州の動き中で皆さん注目していますのが、
「エコデザイン指令の変化」と、
それから、要するに、
「リチウムイオンバッテリー規制」、って皆さん言っているんですけど、
その辺に”大きな間違い”というかですね、従来型の見方で見ているコメントが多い。特に日経の記事なんかはほとんどそれですね。
これ、私に言わせると、「エコデザイン指令からの大きな変化」って一体何か、っていうと、
要するに「製品の製造責任」から「持続可能な選択へのアクセサビリティー」づくりが必要になった。、
「製品製造に対する責任」を20世紀では議論したのに対して、
「持続可能な選択に対する多様な参加者をどうやって巻き込むか」っていうふうなところがですね、大きな変化のポイントになっている。
そのところがですね、なんか皆さん見えずに、”昔とあんまり変わってない”、ということばかり言っているんですけれども、
私はすごく変わっていて、場合によっては、ここまではさすがに言いませんけど、
「製造者責任」から「サードパーティ責任」(*1)という名前になるかどうかは知りませんけど、
”その「循環」というか、『「使用」をつかさどってる部分に対しての責任』をどういうふうに持ってくるか”、
っていうことの議論の下準備が始まってるのではないか。
そういう意味で言うと、〈製品パスポート〉っていうのはですね、日本では、”義務感”で議論されています。
義務付けられて、それは「循環のために必要な義務づけだ」という議論があるんですけど、そうじゃなくて、
”参入チャンスをどう作っていくか、そのための情報の共有化”、っていう形で語られてるわけです。

そういう意味で言うと、
「『エコデザイン』の2009年から2022年の本質的な変化」というのは何かというと、
2009年の段階ではですね、マニュファクチャリングを、要するに「コンシューマー」に持っていく。そのときには、「上市。市場に出すこと」、および、「使用開始時にどういう責任を持つのか」っていうことが、ものすごく重要視されています。
それに対して、今回の新たな方向ではですね、別に、その「マニュファクチャラー」からじゃなくして、
「ディストリビューター」、「ディーラー」、
そこが ”「コンシューマー」に対してどういうふうに向き合っていくのか”、
”そのための情報をどういうふうに管理していくのか”、
この部分が大きな(着目点です?)。
要するに、「製品」だけではなく、「その機能に必要なシステム全体」を考慮することによって、資源効率に向けた重要な成功である(成功がもたらされる)」という言い方を彼らはやっていて、視点をこちらの方に移してきているんです。

それでですね、これは(2022年日本の消費者購入市場における耐久財・自動車の割合
)一体どうなっているか。(*2)
消費者もですね、要するに、”どこにお金使ってるか?”、っていう構造に依存してるわけです。
これ、日本なんですけれど、日本の場合で見ますとですね、
消費者のお金払ってるところの、この赤色のところが、
「家具・家事用品・自動車」いわゆる旧来の欧州のエコデザインが対象としていた「エネルギー関連機器」なんですよね。
要するに、「家電製品・自動車」なんです。
この部分の比率って、今、日本はどんどん小さくなっているわけです。
それで、「耐久財以外」がですね、147兆円。
ちょっと、ヨーロッパのデータが無いので、日本のデータだけ見ますとね、
それで、注意しなきゃいけないのは、この147兆円の中にですね、
要するに「住まい」、これが5.4兆円も。「被服」4.9兆円。こういう感じなんですよね。
これ、エコデザイン自体が、だから、
「エネルギー機器」から
「レジデンス・住まい」と、それから「テクスチャー・被服」の方に向いている、というのは、まさにですね、
”消費者がどこにお金を使っているか?”、っていうところをですね、意識しているわけですね。
その部分をよく見ていかなければいけない、ということになります。

次にですね、全盛期(2009年)と今度(2022年)の違いはですね、
要するに、ここにあるように、前の時点では、
”今まで「性能」だけで競争してたのに対して、「環境的な努力」も市場に持ち込めるようにする”、というのが、前の(2009年の)エコデザインですね。
今度の場合は、要するに、”エコデザインに、もう「性能」も「環境」も考えるんだ”、と。
”そのための「総合性能全体」で「使用する側の価値」で競争しよう”、というふうな方にですね、変換してきてるわけです。
まさにこれ、「作っていく立場」のところに対してよりも、
”「使用する側」の『使用価値』”、そういうところにポイントを置いていっている、ということになります。

これは対象の問題ですから、「エネルギー機器」から、さっき言ったように、”変わったね”、というところにいきましょう、と。

それで、要するに、これもう繰り返しですね。
『エコデザイン』っていうのは、要するに、
”「環境側面」を「製品設計」に組み込む”ところから、
”「バリューチェーンを通じて行われるプロセス」に対して、環境的価値を持つ”。
それから、「義務を持つ主体」っていうのが、「製造者」「輸入者」だったのに対して、「ディストリビューター」だとか「ディーラー」だとか、多くの「経済関係の携わっている人たち」。
その人たちが、『エコデザイン』という「製造者が作ったデザイン」を、
”自分たちがユーザーに渡すときに対して、どれだけ優位に使えるか”、というふうなところに大きな変化のポイントがあるわけですね。

ところがそれを見ないで、皆さん、この”エコデザインの中の「規制」のところは昔と変わってない”、みたいに言っていて、
”一体何を言ってんだろう”、ということですね。
日経などのメディアなんかの論調になっているわけで、それで、アカデミーでもそういうふうな言い方をしてるわけですね。
つまり、そういう意味でのその見方っていうのが大きく変わっている。
だから、特に今問題になるのは、やっぱり〈製品パスポート〉に関しても、
”それを行うためにディーラーにどういう情報を与えたらそれがやりやすいか”、と、
そういう視点でやらなければならないのに対して、日本で見ていると、要するにそれは「循環のための義務づけである」と、
「循環のためにどういうふうな情報がなければ循環できないから、それを助けるためにやっていこう」というふうに、全く筋違いの議論をしているわけです。

その筋違いの議論が一番典型的に現れているのは、
それは「行動変容」という言葉です。
これ、日本では当たり前のように言われますけど、英語で調べたら「行動変容」っていうのは無いんですよね。

ちょっとこれGoogleってみましたけど、
「behaviour」で調べて、日本で言ったら「行動変容」って出ていますけど、
「behaviour change」ってやったら出てきません。
要するに、
「消費者の行動(Consumer Behaviour)」というものがあって、”それに対してどう寄り添っていくか”
というのが彼らの一番の発想になっている。
日本は何か上から目線で、
”消費者が変わらなければいけない”、なんていう議論をやっているわけですけど、
もうその時点で、
先ほどの「『エコデザイン』の見方」、
”消費者のところにどれだけ近くなって、「使用価値」で競争させていこう”、と、
そのために、「ディーラーをどう巻き込んでいくか」というふうな発想のところが見えなくなっちゃっている、っていうのが大きな問題になっているわけです。

これ、同じように、「リチウムイオンバッテリー」ですね、
「リチウムイオンバッテリー」に関しても、これ「リチウムイオンバッテリー」の、昔の〈電池指令〉があったのを、要するに、〈電池規則〉に変える、と、
〈Directive〉だったものを〈Regulation〉に変える、っていうんですけど、
日本では、これが、〈規則〉じゃなくて、〈規制、規制〉って言ってるんですね。

要するに、今まで〈Directive〉っていうのは何かというと、言いっぱなしだったんですね。
”EUの中心はこう考えてます。だからこれに付いてきてください”。
でも、”実行は国によって濃淡があってもいいよ”、っていうのが〈Directive〉なんですね。
それに対して、〈Regulation〉というのは、”全ての国を覆っていく”、っていうことであって、”より実行力(実効力?)を高める”ものになっている。
そういう意味で、これも、〈Regulation〉を〈規制〉と読みたくなる気持ちもわかるんですけれど、
基本的なところは、「”EU内での公正な”産業基盤をどう創っていくのか」。
”EU内での公正な”のところにアクセントがあります。
要するに、はっきり言って、これ、中国を意識しているわけですね。
要するに、中国を意識して、それがEUの中に入ってくるんじゃなくて、”EUの中の産業がどのようにしてうまく活きていくのか”、ということをやっているわけです。

それで、従来の、昔からあった〈電池指令〉っていうのは、「使用済みのみ」を対象にしていました。使用済みの電池に対して、”いろいろ有害物質があるよね”、っていうことで、常にやっていくのに対し、
新しい〈電池規則〉っていうのは、「電池の「生産」「使用」「段階」をカバーする、ということになっています。
それで、「共通の〈規則〉」によって「公平な競争条件を確保」し、域内(EU内)の市場の機能を強化する。
バッテリーの「ライフサイクル全段階」を通じて、「環境(負荷、汚染)」および「社会的(負の)影響」を削減。
「ライフサイクル全段階」というのは、そこに対していろいろな形態、経済が関わってくる。要するに、リユース業者だとか、それから、そこに対する二次サービスだとか、そういう新しいサービスを作っていく。
基本的にそういったものを〈規則〉という形で、”連携できる形”にして、
”欧州域内では良いもので勝負しよう”、というのが、今回の、要するに、〈電池指令〉から〈電池規則〉に変えていった。そこがポイントなわけです。
それで、”そこで何を読むか”、というところで、まだ皆さんが、日本人は”大きな勘違い”をしているんですけれど、
ヨーロッパの中で三つの重要なポイントを言います。
ひとつは、何かというと、
1⃣「持続可能な電池の生産能力に対するインセンティブ」を与える
こういう文章のときにどう読むかっていうと、”今、インセンティブが無い”、っていうことをヨーロッパは認めている”、ってことです。
要するに、今のリチウムイオンバッテリーを作ろうとしているのは、中国や韓国であって、ヨーロッパは、”そのインセンティブを与えるような基盤を作らなきゃいけない”っていうとこにかなり焦りを持っている。
その次に、
2⃣「リサイクル市場の機能化」って言っている。ということは、”現状では機能してない”、っていうことを言っているわけですね。
だから、ヨーロッパは進んでいるかのような錯覚を持ちますけど、
一番進んでいるのは、既にもう中国ですよね。
そういう状態の中で、ヨーロッパの中でも、リサイクル自体が、
中国方式の「より原材料に戻りやすいリサイクル」から、
ユニクロがやっているようなですね、要するに、
「原材料の元の資源を取る」みたいな『環状リサイクル』、
完全に、ヨーロッパは周回遅れで遅れてるわけです。
この部門をどうやって高めるか、という、それが、
3⃣「社会環境的リスク対応」で、
「原材料調達」っていう点が日本では注目されますけど、ヨーロッパではむしろ、「有害物質」だとか、「ライフサイクル」でどうしていくか。
その中で、『ライフサイクルフットプリント』、それを最小化っていうことなんかも謳っていて、
この辺のものをですね、見ていく必要があって、彼らは、だから、昔のように、「リサイクル率何%」という規制に合わせようということをあまり考えてはいない、
というか、僕に言わせれば、次のページに書いてあるかと思いますけれど、

これが実際に、その中で、
「持続可能性と安全性に関する要求事項」として言われていることで、
1⃣有害物質、特に水銀とカドミウム、
これは昔の〈指令〉のときから出ました。
2⃣『カーボンフットプリント申告書』という形で情報が要求される
これはだから、”ライフサイクルで見ていきましょう”、と。リチウムイオンバッテリー、いいけれど、作るのに環境負荷をかけているよね、その部分をちゃんとやりましょう、と。
3⃣そして、この3番目のところだけが、日本の中では、〈リチウムイオンバッテリー規制〉として、バンバン言われるわけですけど、
”リサイクル率をこれだけ上げなければいけない”。こういうことが書いてあるわけですね。
ただ、要するに、こういう中で、全体の中で見ていく必要がある。
4⃣電気化学的性能と耐久性のパラメータを満たした場合のみ、一般の携帯用電池を上市できる。
5⃣最終使用者または独立した作業者が廃電池を容易に取り外して交換可能できるように設計する。
なんていうのを付けているわけですね。
これ、ヨーロッパの人とちょっと議論したんですけど、
要するにこれ、3番目、僕はこれ失政じゃないかって彼らに行ったんです。

何かって言うと、
”リサイクル基準を上げれば意図に反して粗悪品が市場を席巻する”。
要するに、”リサイクルさえしておけばいい”、
・それで「リサイクル不純物」を許容している。
・性能的にも落ちたものを持ってくる。
・寿命、耐久性、発火性、などの問題。
例えばこういうふうに、
・「コバルト」12%、「鉛」85%、「リチウム」4%、ってやっていきますとね、
一体どうやるかっていうと、これ、”工程屑”、産業で作ってる屑のところをリサイクルに回した方が遥かにいいわけです。
ところがさっき言ったように、ヨーロッパの中では、”リチウムバッテリー産業は無い”んです。
だからもう中国なんです。”中国がはるかに優位になるようなものがこういった数値目標にある”、っていうのは、僕はこのヨーロッパの失政だと思っている。
じゃあ、これ、完全に中国に門戸を開くことになっているわけですよ。
そしたら、一応ヨーロッパ人は、下の、だからそれで、
”この4番目と5番目読んでくれよ”、と。
特に4番目。要するに、製品に対する電気化学的性能と耐久性のパラメータ、
”「性能のパラメータを」を入れないと使えないよ”、っていうような形で、中国には歯止めをかけているんだ、
って言うんですよね。
だから、そういう関係なんですよね。

そもそも、リチウムイオンそのものに対して、日本と考え方が違って、
・「高性能で可搬な蓄電装置」っていうのは、「エネルギーの環境効率の高い利用」という観点で、今後、決定的ともいえる役割を担う、というふうに、彼らは見ています。
”日本は「便利な装置」としてしか見てはいませんか?”、と言ってですね、
かなり生活の中に全部入れ込むだろう、と言っているわけですね。
・しかし、リチウムイオンバッテリーは「高度で精密なテクノロジーや物質の集約体」であり、製造には多大なエネルギーやプロセス物質を伴うことから、環境に大きなフットプリントを残しながら製造される可能性がある、ということは、ちゃんと分かっている。
そして、それが、
・そもそもが、エネルギーの集合体なので、高性能化のために可燃性、有害性を含む物質が用いられる可能性があり、それらをEoL(End-of-life product)〈保守終了製品〉(*3)を含んで環境に排出されないシステム設計をやらなければならない、
って、そういうふうに言っているわけです。

こういう考えですからですね、ヨーロッパの中でのディスカッションを見ていましても、パブリックコメントはあるんですけれど、
例えば日本では、素材産業なんかはですね、
”こんな規制やってくれるな”、”こんなルール作ってくれるな”、って言うんですけれど、
むしろ、それに対して《responsibility》を主張しています。
日本で言うと、《responsibility》は《責任》と訳されるんですけれど、
むしろ『当事者』ですね。要するに、”私達がそれに対するいい素材を作っているんだよ”、と。
だから、基本的に何というか、「総論賛成、各論反対」じゃなくて、
「各論賛成」なんですよね。
”「各論」の中に、「要素」があるからこそ、私達の素材が使われいるんだ”、という議論になっていっている。
それで、時たま、ぱっと見ていますと、パブコメに反対意見があるんですけど、よく見ると、日本の「何とか工業会」っていう、”日本だけ”、みたいな感じになっているんですね。
要するに、これによって自分たちの生産工程なんかを阻害を受ける、っていう発想で見ているわけです。
今はこういうふうにですね、今ポイントになっている『エコデザイン』と『リチウムイオンバッテリーの新しい規則化』の方向を見てきましたけれど、
やっぱり、”何が起きているか”、じゃなくて、日本は、何か”昔の姿で見ている”、っていうのはすごく気になってます。

それで、さっきも言いました
じゃあ、”「理想」と「規制」でやっている”、っていうことですけど、
”「理想」でやっている”、これはこの談論風爽でどなたかが言われた時に、私は、”また..”と思ったんすけど、
要するに、”ヨーロッパで”といっても「多様な国々の最低限の一致」。
ラテン、ゲルマン、スラブ、それから、スペイン、もう全部いるわけですよね。そういう中において、「普遍性が高い目標設定」となったら、「理想」を言わざるを得ない。
”みんなの共通一致点は何か?”、って言ったら、「理想」になる、っていう、その部分をよく見とかなきゃいけないんであって、その「一致」を創ろうとしているんであって、「理想」で引っ張っていこうとしてるんじゃない、と。
これが、日本に持ってくるとそれが、
理想が「justice」ってなり、「正義」になり、
”環境のために何かしなければいけない!”、っていう発想になってしまって、ヨーロッパではない、日本が振り回されてる、っていう感じですね。

そして、問題はもう一つあるんです。
これはもう、これはもう、横に書いていますけど、2017年か何かの時にも、僕、これ喋ってるんですけど、『Green deal』(*4)が、今はもう〈グリーンディール法〉っていうふうに2020年にできましたけれど、
その前に、出てきたときにですね、2番目のところで、
・「規制」と「財政誘導」を、”20世紀型の古いモチベーション形成”として否定していって、
「持続可能性」を価値として消費者を含む各経済主体が価値獲得のコストを負担し、そこに『投資』も呼び込む、
っていうのが、
もうそもそも『Green deal』の一番基本的な考え方なわけですね。
そういう意味で言うとその「規制」と「財政誘導」、特に「規制」に関してはヨーロッパはもう、要するに、”古いモチベーション”として否定してるんですね。
現に、そういう意味で言うと、昔の「非関税障壁」として、「関税障壁」を作ろうとして、「鉛フリー」(*5)の話だとかですね、
むしろヨーロッパ国内の産業に対してダメージを与える。
日本に対して、逆に”門戸を広げる”、っていうか、逆に日本製品が入り込むようなことでした。
それをですね、反省している。
そういうところを見ておく必要がある、ということです。

これ、「サーキュラーエコノミーは何故出てきたか」、っていう話、これはちょっといいとしてですね、
基本的にそういう意味で言った場合には、ヨーロッパの場合はやはり、その、
”どこを見ていっているか?”、っていうことになったときに、「規制」「ルール」を作ってやっていっているのではなくて、要するに、

今までの「リニアな経済」、リニアなケース、
「生産者」のところで、そこで勝負していて、生産者から投げられた、外に出した分を、その後どういうふうに回していく、と。
”回していく”、っていう言い方自体が、ちょっとサーキュラーな言葉になってますが。
”どういうふうに「使っていくか」、「繋いでいくか」”、
その部分に新しい経済的な要素、新しいその産業活性の要素を見つけ出そうとしているんであって、
それをですね、リニアな構造のまま、
”「規制」や「理想」で引っ張っていこう、というふうにやっているな”、っていう議論をですね、アカデミーまでがやってるのは、ちょっと日本の貧困であるな、と思います。

さらにちょっと言わせていただきますと、ヨーロッパのやり方も、もう不十分で、そうして見たときに、
ヨーロッパの場合は「B to B to C」で、この絵「B to」で、次の「B to C」に視点を置く、
”「C」に近いところの「B」の、「スモールミディアムエンタープライズ」(*6)、中小企業だとか、サービス産業だとか、そこら辺に移行しようよ”、
っていうのがですね、ヨーロッパの動きの中心である。
ところがですね、どうも日本でこの話はなかなか通用しないのです。
よく考えたらですね、日本はここのところに、「S」 があるんですよね。「ソーシャルインフラストラクチャー」。
だから、日本はですね、どちらかっていうと、「B to B to S to C」 なんですよ。
ソーシャルインフラストラクチャーに対して投資することによって,
ソーシャルインフラストラクチャーを整えることによって、「コンシューマー」というか、「コモンズ」っていうのはその辺を形成していく、っていう形で、要するにこの「C」に対する利得を得る、っていうようになっているので、
今言った、”ヨーロッパの見方をそのまま日本に持ってきては通用しない”、っていうところを、そこ議論しなきゃいけないんじゃないかな、と思っています。
だから、「スモールミディアムエンタープライズ」や「B to C」って言われたって、
”違うよ、うち、納めてるのは「企業」だよ”、と。
”それじゃあ、企業はどこに納めてるの?”、って、
なんかゼネコンのところに持ってったり、やっておられるわけですよね。
情報系ですとね、ソーシャル情報系インフラストラクチャーに行っちゃうわけで、全部そっちに流れる。
だから、「C」まで行かないんですよね。
この「B to S」を持ってやらなきゃいけない。
別の見方をすると、日本で再エネが進まないのが何か?っていうと、この「B to S」をやろうとしている産業がないからです。
要するに、ソーシャルインフラストラクチャーに対して、どうビジネスで組むか、ではなくして、「B to C」みたいな形での再エネ産業はいっぱい出ているけど、「B to S」をやる気になっているところの大手さんが無い。
この前も、私も国の「グリーン調達委員会」で発言してきたんですけど、この部分を、要するに、グリーン調達自体が優遇していくようなやり方をやってやらなきゃいけないんだけど、
”ここは「B to S」だから国は関係していませんよ”、なんていうことを言っている。
これじゃ、進むはずがないんじゃないかな、ということでございまして、要するに、

理想を掲げなければならない欧州を、それを「ジャスティス」と受け止めて、”20世紀型の戦略感”での対応を考えている、
っていうのが今の日本のやり方、だと。しかも日本のアカデミーでも。
欧州の厳しい立場を理解して、要するに、「日本と欧州の構造の違いを意識して」どう適用していくのか。
欧州は、ある意味、域内の経済の保護に目一杯で、場合によっては、〈リチウムイオンバッテリー規則〉みたいに、中国の、逆に、前に日本に対しての失敗したのと同じ過ちをやってしまいそうな法律さえ作っているんだ、と。
もはや、システムも、昔と違うのは、”日本は欧州の眼中には無い”。
ということで、新しいその辺のものを学びながら議論していくことが重要だということですね。
本日の私の話を終わらせていただきたいと思います。

 

 
(*1)サードパーティー
サードパーティーとは?業界別の使われ方とサードパーティークッキーも解説 !
https://www.profuture.co.jp/mk/column/47756
MarkeTRUNK2023.2.28

(*2)統計局 家計調査
https://www.stat.go.jp/data/kakei/index.html
総務省

(*3)EoL(End-of-life product)〈保守終了製品〉
保守終了製品
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%9D%E5%AE%88%E7%B5%82%E4%BA%86%E8%A3%BD%E5%93%81
〈Wikipedia〉

(*4)グリーン・ディール
欧州グリーン・ディールの概要と循環型プラスチック戦略にかかわるEUおよび加盟国のルール形成と企業の取り組み動向(2020年3月)
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2020/01/a4731e6fb00a9859.html
JETRO

(*5)鉛フリー
鉛フリーとRoHS指令は同じですか?
https://www.kogadenshi.co.jp/2015/02/19/%E9%89%9B%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%81%A8rohs%E6%8C%87%E4%BB%A4%E3%81%AF%E5%90%8C%E3%81%98%E3%81%A7%E3%81%99%E3%81%8B/
株式会社古賀電子

(*6)スモールエンタープライズ
SME 【Small and Medium Enterprise】 SMB / Small and Medium Business
https://e-words.jp/w/SME.html
IT用語辞典

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