190320 日本金属学会「ここ30年の金属トレードフローの変化に見るモノづくりJapanの位置」
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【緒言】この発表は2009年に筆者らが発表した「トレードフローに見る日本素材産業の位置」のフォローである。当該論文は「素材Japan」との表現を生み出すほど社会の中に置ける工業素材産業と技術の重要さを示したが、それから10年その変化が急速に起きている。またバブル30年といわれる今、歴史を遡及してその変化をみてみる。
- 【方法】トレードフローのデータは国連貿易統計Comtradeのデータベースより取得した。対象とする品目に対して、年間の輸出総額、輸入総額の上位10か国、および、輸入国側のデータから二国間貿易の上位20ケースを取得した。これらのデータをMicrosoft Odffice VBAで処理し、ディフォルメした地図上に図示した。その際、白抜きは総輸出国、白丸は総輸入国を表し、二国間貿易は輸出から輸入への矢印でその太さを世界総貿易額との比で表した。それぞれの国は国連二桁コードで表した。
- また日本の輸出内訳は貿易統計の品目別表の輸出額データを用いた。その際、品目を、工業素材、器械、電気電子、輸送機械、およびその他に分類した。さらに工業素材は、化学物質、プラスチック、窯業素材、鉄、非鉄金属、構成基材、製品、などに再分類し、輸出総額および工業素材輸出額との比を得た。なお構成基材とは、製品の一部の機能現出(構造的機能を含む)のために作り込まれた材料(prepared material, member subject)を指し、鉄、非鉄金属、プラスチックに分類されるのは汎用の一次加工材にとどめた。
- 【結果】得られたトレードフロー図の一例として1988年の鉄のフローを示す。典型的な20世紀に形成されてきたグローバルな日米欧の三極構造を示している。これが2017年には東亜、米、欧のエリア化された構造に変化してきている。非鉄金属のフローはここ数年で中国一国集中が起きており、特に鉱石のフローでの一極集中が著しい。我が国の輸出構成では1988年にはその一割に過ぎなかった工業素材が20世紀に入って主役となり、2017年時点も機械、輸送機器、電気電子機器を凌いで輸出額シェアの1/4を占めている。工業素材の中でも比率が高いのは構成基材である。我が国のモノづくりのカギは構成基材であり、今後汎用素材と目的に合わせて調製された構造基材を区別して分析を進める必要がある。
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