「福島事故から10年:廃炉と復興の現状と課題」 鈴木達治郎氏 2021 6/8

コラム紹介

2021年6月8日 「福島事故から10年:廃炉と復興の現状と課題」

鈴木達治郎氏 長崎大学核兵器廃絶研究センター 副センター長・教授

 

 

タイトルちょっと変えたんですけど、
実はですね、4月の終わりにこのテーマで国会で参考陳述人で喋った経緯がありましてですね、
課題なんですけど、提案をしたということで、その提案をちょっと今日お話します。
そのダイジェスト版です。
 

 
要旨は、
・10年経って、廃止措置の進め方や復興の進め方について具体性を見直す時期に来てんじゃないか、っていうことでですね、
・まず廃止措置については東電じゃなくて新しい専門の機関を作る。
・それから、お金もですね、東電から払ってもらっているんですけど、東電からお金払ってもらってもいいんだけど、別に基金をちゃんと作って透明性を高める。
それから最後は
・第三者評価をちゃんと加えて、全体のプロセスを評価する仕組みを作る、
と、これが中身です。
 

 
組織、現在の体制、これ、こんなのないんですよ。
政府のいろんな書類から作ったんですけど、
ここがホールディングカンパニー([東京電力HD])で、その下に[廃炉推進カンパニー]ってのがあるんですけど、
ここ(廃炉推進カンパニー)が実際はやってるんですけど、予算はここ(HD)からくるんですね。
安全規制はかかっているんですけど、お金はこの損害賠償支援機構から借りているって形。
この下に研究開発の組織があって、廃炉、汚染水についてだけは、こんないっぱいタスクフォースができている。
これがわかりにくいですね、というのがまず私の印象です。
この[国際エキスパートグループ]っていうのは、現在開かれてないみたいだし、
この廃炉機構、「国際機構」って書いてあるんだけど、中身見るとほとんど日本の企業ばっかりというのが現状です。
 

そして、これはもう皆さんご承知の通り、現在やっている政府の仕組み、東電の仕組みについては、「信頼関係はありません」という、そういう世論調査です。
NHKと朝日新聞と、全国と福島なんですけど、
「基本的に順調でないですよね」、っていうデータを見せているということです。
 

 
技術的な大きな問題として、「デブリが取り出せるかどうか」っていう話があるんですが、
今、取り出すことを前提にクリーンアップ、現状をきれいに出す、場所をきれいにするっていう前提で動いているんですけど、さすがに原子力学会もですね、無理だろうということでですね。
これ、「エンドステート〈最終状態〉にかかわる議論を始めるべきだ」、っていう報告書を去年出したんですね。
なかなかよくできていて、「エンドステートがもし全部きれいにならない場合どうしたらいいか?」っていうのは、
遅らせて、「その敷地内に閉じ込める仕組みを作る」という、そういう提案をしていて、それによって廃棄物の量が大きく変わる、という提言を出してますので、これなかなかこういう議論をする必要性があると私も思います。
 

 
結論から言うと、
・”今の事故を起こした組織である東京電力じゃなくて、新しい廃止措置機関を作った方がいい”、と。
これは実は、私が原子力委員会にいたときに、”こういうのを最初に作ったらどうですか?”、って言ってだめだったんですけど、「5年ごとに見直す」って言っていたんですね。
もう10年経っちゃったんで、ここに書いてありますように、
現場で働いている人たちのモラル向上も考えるとですね、やっぱり、新しい東電のジャンパーと帽子かぶってるとなかなか大変なので、新しい機関にした方がいい、と。
実際働く現場の方々は、やはり東電の方々中心になると思いますけど、ヘッド、頭はですね、司令塔はちゃんと国が責任持つ組織にした方がいいだろう、と。
・そのためにそれの全体の助言をするためにですね、世界の英知を集めるための第三者機関を作る。
・モデルはイギリスの[原子力廃止措置機関 NDA]なんていうのがあるので、これをモデルにしたらどうでしょうか?っていうことです。
 

 
お金の話。
これお金の仕組みなんですが、これ一目で見てわかる人はあんまりいないと思うんですよね。
結局、[原賠・廃炉機構]が東電に、(ここが東電なんですけど)東電にお金貸す、”貸す”、って言わないで、”資金交付” という言い方、借金したらまずいので。
あと、他の電力会社も、ここ(原賠・廃炉機構)に「一般負担金」で出している。
それから、金融機関に返済しているのは、ここ(原賠・廃炉機構)が返済してる。
ここから、この後で支払い、返す、そして、賠償はここがやる、と。
まあ、なかなか難しいですよね。これ法律に則ってやっちゃっているんで、こうなっちゃってるわけですが、

実際はですね、もう22兆円で済まないんですけども、支払いの仕組みの仮説がですね、
”年間5000億の利益を上げなきゃいけない”、とかですね、
”株の売却益で払う”、とか、
”足りない分は、国が、これ税金でまかないます”、
というふうに既になってるわけです。
 

 
我々としては、
これは日経センターでやった推定値なんですけど、
廃炉を延期すれば、35兆円。
トリチウム分離したりして、大体全部やると、81兆円。
政府の22兆円にはですね、廃棄物処分のコストは入ってないんですよ。
廃棄物処分のコストも入れると、まあ、大体50兆ぐらいはかかるだろう、という感じですね。
 

で、他のTMI(スリーマイル島)の事故のときとか、チェリノブイリの時とかどうしたかっていうとですね、
スリーマイルは全然桁が少ないんですけども、それでもですね、まだ困っているんですよ。まだ10億ドル足りなくて、基金で一応基本的に払う。
これは電気料金である部分はまかなっていいです、ってことで、
最初にですね、こういう国際的な[GEND](*1)っていう、電力会社が中心になって、あと研究機関とか政府の機関とか、
日本の電力会社や重電が3社、原研などもお金出してるんですね。大した金額じゃないですけど。
そういう仕組みを作ってるんですね。今のスリーマイル島も、2037年まで、廃止措置を遅らせるっていうふうに今考えています。
 

チェルノブイリもご存知のように、まだ石棺ができて、今ドームを作っていますが、チェルノブイリは元々お金がないところだったので、旧ソ連でウクライナですね、今は。
・欧州復興開発銀行が中心になって基金制度を作ってですね、そこにいろんなとこからお金をもらっている。
G7も払っていますし、
・この[原子力安全基金]っていうのは、旧ソ連型原発の安全確保支援のための基金で、これだけのお金を払っている。
実際に廃棄物処理のためのプラントの建設にもお金を払っている。
・それからシェルターを作るときにも新しい基金(チェルノブイリ・シェルター基金)を作って、国際支援を募っていますね。
日本はもちろん払っていますけど、これだけの国が払ってる。
 

ということで、廃止措置もですね、何十兆円もかかるわけですから、東電だけで払えるわけがないので、
・もう今の段階で、別の基金にしてですね、
・国際調達も始め、寄付も募り、
・原子力産業ももっとお金を出すっていうことにしてですね、
しかも、ここはもう、
・基金の運営は信頼できる第三者がちゃんとやってですね、透明性を確保する。
この賠償とかですね廃止措置の除染のメカニズムでですね、大変黒い闇があるという、最近そういう報道もなされていましたけど、
透明性が長い?んですよね。やっぱり税金でやっちゃうと、そういうところがどうしても出てきちゃう。
この辺をちょっと何とかしてほしいですね。
 

最後は、この復興についてのプロセスもですね、何回も私言ってんですけど、
この〈こども・被災者支援法〉って素晴らしい法律があるんですけど、
ここに、”被災者が帰ろうが帰れまいが、ちゃんと支援すべきだ”、って書いてあって、しかも政府の責任まで書いてあるんですね。
「原子力政策を推進したことに伴う社会的責任を負っていることに鑑み」って書いてあって「国が責任を負うこと」っていうのは(3条)に書いてあります。
これが全然今できてない、っていうことで、残念ながら国会議員の方々でさえ、この〈こども・被災者支援法〉の存在を忘れているという人が出てきているっていう状況なので、
もう一度この精神に立ち返っていただきたい。
 

それで、そういうプロセスを評価する委員会をちゃんと作る。
その中でですね、東電や経産省がですね、きれいにできない、ってなかなか言えない立場になっちゃってますので、
こういう新しい機関を設置し、評価委員会を作って、そこでステークホルダーを巻き込んでですね、最終的な状態はどういうのがいいのか、っていうことを議論するかとか、客観的に評価する仕組みを作る。
これは事故を起こして信頼をなくしている東京電力や政府ではなくて、独立した機関が望ましい。
そして、大事なのは〈こども・被災者支援法〉に則ってやることだ、っていうことで、
これ国会でお話ししたことなので、
”国会がそのような機関を設置することを検討してください”、っていう、そういうことを話しました。
以上です。ありがとうございました。

 

 

(*1)GEND 参考記事
TMI-2 Clean-up プログラムについて 
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sochi1/siryo3.pdf

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