「四方よし」のスマホのクリーン・リユース・システムの構築を
9月2日のCE-MVC研究会メンバーミーティングで、現在進められている電気通信事業法の改正によるスマホ等の端末販売の『完全分離プラン』、に合わせて進んでいるスマホのリユース、リファービッシュに関しての講演があった。現在総務省主導で、「リユースモバイル関連ガイドライン検討会」が進行しており、他のリユース分野と比べても国としての位置づけも大きく、今後急速にスマホのリユースやリファービッシュが展開されていくものと思われる。
なお、現状でもAppleは自社製備品としてリファービッシュのスマホを市場に提供し、海外ではSIMfreeの状況の中でダイレクト・リユースのスマホがかなりの比率で流通している。さらに国内のプロバイダーではリファービッシュド・スマホを活用した法人レンタルを始めたところもある。
このような中で懸念されるのは、ひとつに個人情報の管理であるが、それとともに、リユースやリファービッシュのレベルに達しない再利用不可スマホ(以降「廃スマホ」と呼び「使用済みスマホ」と区別する)のE-waste化である。特に東南アジアなどの海外では急速にダイレクト・リユースやリペア業がすすんだため、そこから発生する廃スマホはその含有する資源価値で処理されるため、資源価格動向によってはE-waste化してしかるべき取引構造になっている。
他方で、我が国の「小型家電リサイクル法」は、E-waste化させず廃棄物資源の有効利用を図るゼロエミッションを裏付ける高いトレーサビリティを有している。
しかしながら「小型家電リサイクル法」に基づく循環は廃棄物としての循環であり「消費者」→「自治体」の間で残存価値の還元はなく、リユースのシステムができれば多くのスマホが残存価値を消費者に還元することができるリユースシステムに流れ、せっかくのゼロエミッションシステムを生かすことができなくなる恐れがある。また消費者としては、東京オリンピックのメダルプロジェクトのように自らが残存価値の回収を行わなくとも、リサイクルを通じて社会的に資源価値の回収を希望することもあるが、その際にリユース可能なスマホまでも機能を喪失させた資源回収に持っていくことは「もったいない」ことでもある。
このように考えると、従来から動いている「小型家電リサイクル」の流れと、現在進んでいるリユース・スマホの流れを競合させるものではなく、一連のスマホ循環システムとして作り上げることが求められてくる。
そのスマホ循環システムの一例を考察してみたのが図1である。図の中で青い線による流れは、従来から進められている小型家電リサイクルの流れであり、消費者の「もったいない」の精神のもと資源の回収とトレーサビリティのある発生廃棄物の適正処理が行われる。ここで、今動きだしているのが、赤の実線で記したダイレクト・リユース、リファービッシュ、部品リユースの流れである。これは退蔵部分や産業屑から残存価値の還元を意図して使用済みスマホを静脈流通ルートに乗せ、消費者への安価なスマホの提供や、サービサイジングビジネスでの利用の可能性もたらす。
この両者を結合させる流れが、緑と赤の破線の流れである。すなわち、「もったいない」思考で小型家電リサイクルで集まってきたスマホを、小型家電認定事業者からリユースのスマホの機能状態を選別する業者に一度回す流れを作る。そこで、リユース、リファービッシュ等の対象となりうるものは、リユース事業者が有価物として買い取り、それ以外は小型家電認定事業者に戻すようにする。この流れを小型家電リサイクル法と整合性をつけるならば、小型家電リサイクル認定事業者がリユース事業者に有価物となる可能性のある使用済みスマホを売却するのではなく、委託契約のかたちで、資源再生のほうが好ましい「廃スマホ」を選別してもらい、残りの廃棄物としての取り扱いにならない有価物をリユース流通市場に引き渡すという形が好ましいであろう。
これにより、リユース事業者は、従来の小型家電リサイクルルートからも使用済みスマホの供給ができ、小型家電リサイクル認定事業者は自治体から引き取った使用済み携帯から資源価値より高い残存価値を取り出すことができるようになる。また、この選別委託の中に「個人情報の消去」を組み込むことも考えられ、「もったいない」発想ながら個人情報の処理で躊躇している消費者の悩みに応えることもできる可能性がある。
今一つの流れは、赤い点線で示すリユース事業者から小型家電リサイクル認定事業者への廃スマホ、廃部品の流れである。リユース事業者のもとに集まる使用・再生不可能なスマホや部品取り出し後の残存部分を小型家電リサイクル認定事業者に持ち込み、そのトレーサビリティの高い処理で、資源回収と廃棄物の適正処理を行う。これは小型家電認定事業者に資源回収の残存価値を引き渡すのみならず、海外では得てしてE-wasteの発生原因の一つとなっている廃スマホのようなリユース崩れに対し、トレーサビリティの高い循環システムに組み込むことにより、E-wasteの発生と防止したシステムであることを、提供する消費者や利用者、利用法人に自信をもって示すことができるのである。
このように、消費者にとって「もったいない」であれ残存価値の回収であれ使用済みのスマホを有効処分できるとともに、安価なスマホやそれに基づくサービスシステムが提供される可能性がある「消費者よし!」、小型家電リサイクルに家庭事業者にとって、使用済みスマホの奪い合いを避け、かつリユース・ルートからの廃スマホの還流ができる「リサイクル事業者よし!」、リユース事業者にとっては、資源リサイクルとの競合防止やそちらからの還流のみならず、世界にもまだ例を見ない資源循環(substance recycle)のみならず廃棄物適正処理(residue recycle)まで責任を持ったリユースシステムを誇ることで、消費者から安心してより多くのスマホの提供を受けることができる「リユース業よし!」、そして最も重要なことは、それによりE-wasteの発生がないゼロエミッション型のスマホ循環システムが形成される「社会よし!」の「四方よし!」のシステムとなりうことが期待される。
これを特に、「社会よし!」の視点から、スマホの「クリーン・リユース・システム」とよび早期に実現させたいものである。
(原田 幸明: SusDI 代表理事)
ディスカッション
コメント一覧
9月2日(月)の会議もご登壇されました各社様の戦略的なお取り組みなどご紹介頂き、弊社としましては新しい情報が多くとても勉強になりました。
いち小型家電リサイクル認定事業者としては、スマートフォン等の残存価値の定量化したレベルを設定し、ダイレクトリユースをはじめ、それぞれの目的に適う残存機能ごとの分類に対応することの可能性について追及が必要と認識することができました。
一方で、現状の小型家電リサイクル法のもとで「高品位」として回収している携帯電話やスマートフォンは、量の問題は然ることながら、損傷が激しいものを除き、ほとんどが現行品の三世代前以前の機種が多く、古い機種でも極端にお得感がある価格差をつけるか、またはこの分野もヴィンテージが今後ブランド化でもしていかない限り、一般消費者向けのダイレクトリユース目的に振り向けることが難しい印象を持っていますので、改めてこの視点で回収機器の実態を検証することの重要性も感じています。(損傷原因には、集荷する過程で雑に扱っていることも十分考えられますが。)
小型家電リサイクル法では、認定を受ける事業計画に「再利用」を含めることができ、既に「再資源化」+「再利用」に取り組まれている認定事業者も存在し、ここには確実性のある個人情報保護体制が要求されているようですが、この認定事業者が有価で仕入れるか、廃棄物として処理委託されているかによって所有権(誰が最終ユーザーか)の所在が異なると考えており、最終ユーザー(占有者)の意思によって「使用済みスマホ」か「廃スマホ」かを判断するニーズが本来はあるのかもしれません。(古物の概念や、産廃の総合判断説のように)
そして自動車などの他の工業製品と同様に、社会として管理可能なライフサイクルにするためには、使用段階のサブスクリプション化が有力とも考えられます。
以上のように現状は疑問や課題がありますが、このテーマに関連する業者として社会的なニーズが高いモデルの構築や制度設計に寄与できるよう引き続き学んで参りたいと存じます。ありがとうございました。
リユースモバイル関連ガイドライン検討会での総務省の立ち位置はあくまでオブザーバーで、主導は業界団体「リユースモバイルジャパン」でした。訂正します。 原田