中村崇先生〈東北大学 名誉教授〉
今日は、「大きいリサイクル技術と小さいリサイクル技術」ということでお話しします。
日本人が、よく言われるように「小さいのが好き」と、コンパクトにまとまってる方がどうも合ってるみたいだ、ということで、昔々にトランジスタラジオを創り、ウォークマンができて、これは画期的だっですね。
それから、日本独特とまでは言いませんが、軽自動車というジャンルがあり、旅行カバンなんかも、日本はともかく小さくしたがる傾向にあるのですが、海外の旅行者って本当にの大きいのをどんどん平気で持って歩く、とこのあたりが感覚が全く違うな、というところで、
それを「リサイクル」と「リサイクル技術」、「廃棄物処理」も含むのですが、対応してみるとこのようになります。
これは有名な廃棄物リサイクル産業の世界的に大きな会社です。
Waste Management,VEOLIA,SUEZ,REMONDIS,SIMS,umicore
〈umicore〉はちょっと違うんですが、このような企業があって、
売り上げを見ていただくと、全然日本とはレベルが違う感じになってますし、従業員数も、当然それは全く違う、というような状況です。
これは日本のですけれど、
これはホームページから拾ってますから、どの程度確かは分かりませんが(ある程度確かなのだろうともいますが)
一番大きいというか、金額的に売り上げが大きいのは〈大栄環境ホールディング〉で、
こちらは廃棄物処理が中心ですが、それでもこの程度である、と。
700~800億も行かないくらい、かな、という感じですね。
それで、リサイクル専業というと、〈リバーホールディング〉と、また、ちょっと違う〈DOWAエコ〉があるのですが、それでも数百億、やはり500億行かない位。
まあ、DOWAエコは行ってるんですけれど。
資本金は業態に応じて全然違うので、比較にならないですが、そういうものである、と。
よく出てくる元気がいい〈ハリタ〉さんでもこういうレベルです、ということで、あまり大きくない。ということは、技術もやはり違ってくるな、ということで。
まあ、産廃リサイクル屋の売り上げ分布を見てもですね、10億円超えてるなんていうのはほんのちょっとしかなくて、圧倒的にこのあたりが多い。
真ん中のつまり業種にもよりますが、せいぜい5000万から1000万くらいの売り上げ、というようなところが非常に多いことになります。
で、小さいと何か不都合なことがあるのか、ということなんですけれど、これは
「技術志向」が異なります。
大規模な対象物を処理する技術と、小規模の対象物を処理をする技術と、かなり異なっているんです。
従って、世界的には非常に大きな対象物というか、大量の処理をするということ、まあ、たぶん、日本の技術をなかなかそのまま持って行っても簡単にはいかない、もちろん日本の技術がちょうどいいところの国も結構あるのですが、ま、そのあたりがかなり違ってきます。
技術の在り方が違ってくる。
ただ、日本がよく言われるように細かいところに目が届く技術開発はちゃんとやります、と。
で、何でそうなったの?ということですが、先ほど最初に言いましたように、
日本はコンパクトになものが好きだから、とか、
歴史は実は本当は廃棄物処理はなかなか古いんですよね。
ヘタすると、千何百年あるんですけれど、まあ、近代的なものから行くと比較的浅い。
それと、まあ、回答は、これは個人的な回答なんですけど、
”「産業廃棄物」、「一般廃棄物」の処理が分かれている” と。
これを私は“グレートウォール「Great Wall)”と呼んでいますけれど、まあ、そういうことですね。
また、「それぞれの免許の取得が難しい、厳しい」できない。
まあ、一般廃棄物は無理ですね、もう。
産業廃棄物はできないことはないんですけれど、まあ、なかなか大変。
また、「産業としての認知度が低い」、今はだいぶ良くなりましたけれど、基本的に認知度が低い、ということであります。
「プラスチックのリサイクルにおける実例」ということで、簡単に挙げたいと思います。
日本では、比較的少量対象物における精緻な分離が進みました。まあ、これはご存知の通りですね。
特に家電リサイクルで、三菱電機とパナソニックの分離技術などは、これはもう精緻でですね、まあ、よくこんなことちゃんとやりますね、という意味では非常に感心できる技術、なわけですね。まあただ、大量処理にはあまり向いていない。
これはご存知のように「家電リサイクル」という非常に限られたところでやってますから、そんなに大量の処理をする必要がない。
逆に言うとできないですね。あれだけ拠点があって、分かれてちゃんとやってると、なかなかそういうふうには発展しない。
ところが、欧米はですね、非常にプラスチックについても大変大きな※ソーティングセンターが(あちこちに)設置されている。
有名なGalloo(*1)の技術でも大量の処理ができる。
で、まあ、Gallooの技術が、どうしてあのような技術を開発したかというのは、やはり“処理量”なんですね。
ということは、まあ、やはり方向性が違う、ということを充分考えておかなければならないので、日本もよく「環境技術を世界に売り出す」とか、いろんなことを言っているんですけど、
技術志向が違いますから、まあ、どういうところって、先ほど言ったように日本の技術が向いてることろもあるんですけれど、まあ、そこら辺を考えなければいけない。
具体例がこれで、
これ有名なんですけれど、三菱電機の、もう本当に精緻ですよね。家電で自分のところで集めたものを、まあ、一応、ある程度破砕をする。
比重選別(*2)は一応かけて、ここが、静電選別(*2)があそこの(三菱電機の)特徴ですから、これでかなりキレイにプラスチックの種類を分ける、ということをして、それから、家電の場合は、RoHS(*3)対象かということはすごいききますから、それしっかり分ける、ということをします。そのためにXRF(蛍光X線)(*4)のソーター(*5)を使います。
また、それから、チェックをして、また、色選別までやってキレイにして、また戻してペレット化する、と。
もう、ある意味これはパーフェクトな技術。
ですけど、じゃあ、これをですね。家電以外の大量に出てくるようなちょっとレベルの低い廃棄物のプラに適用できるかと言うと、これはなかなか簡単ではない、ということになります。
で、こちらがGalloの(中の技術のことは書いてないのですが)比重選別(のプロセス)です。
Galloは、ミックスプラスチックを比重選別をやる、そこに技術があって、実はGalloの比重選別は重液(*6)と軽液(*7)両方やっていて、非常に大量に、そこにどういうものをどれくらいのレベルで、処理したらいいか、というのをちゃんと聞いた上に設計ができるような技術になっているんですね。
で、結果的にはこういう感じ。一番下が発生物ですけど、こういう感じで出てくる。
ということで、まあ、日本だと最近ではGalloの技術を導入して、だいぶ悩んでたようですが、豊通マテリアルさんとヴェオリアジャパンと組んで、プラスチックのそこそこ大きい分離設備を作る、というようなことになっている、ということになります。
ですから、最終的に、というか、世界的に見てプラスチックの分離技術がどちらが行くの、というと、なかなか日本式の三菱電気とかパナソニックとか、パナソニックはやはりソーターなんですけど、これまた、非常に凝ったソーターで、一応、臭素系難燃剤まで分けられるということになっているソーターがあるんですけど、そういう方向に行くところと、こうやって大量処理をやれる、というところ、こういうふうに分かれますと、その技術がどこから来ているか、というと、まあ、多分ですね、産業廃棄物、一般廃棄物が分かれていて、どうしても日本の廃棄物処理・リサイクルという対象物が小さい単位でしか、なかなか回収できないし、それを処理することで充分である、また、精緻な個別リサイクル法があって、その枠から超えることがなかなかできない、ということ。
そういうところが原因ではないかと思います。
それがいいか悪いかというのはなかなか難しいところですけれど、それが現実ではないかな、ということで問題提起をさせてもらいました。
【参考資料】
*1 「豊田通商株式会社 平成27年度低炭素型3R技術・システム実証事業
(ミックスプラスチックの高度選別、コンパウンドによる
工業製品化事業) 報告書」
内に Gallooについての記述内容有
https://www.env.go.jp/recycle/car/pdfs/h27_report01_mat08.pdf
*2 プラスチック情報局サイト
家電リサイクル工場から出た混合プラスチックを(株)グリーンサイクルシステムズ(三菱電機出資の子会社)の高純度選別システムについてレポート
*3 RoHS:Restriction of Hazardous Substances Directive
(危険物質に関する制限令)
Wikipedia
JETROサイト内
RoHS(特定有害物質使用制限)指令の概要:EU
*4 蛍光X線 Wikipedia
*5 「リサイクル技術動向調査及び使用済自動車の スクラップ選別の最適フローに関する検討業務」 報告書 (実施期間 2017 年 8 月 4 日~2018 年 3 月 31 日)
株式会社 三菱総合研究所 環境・エネルギー事業本部 鵜飼 隆広 日産自動車株式会社 材料技術部 服部 直樹、 小金沢 泰一
*6 重液
コトバンク
純水より比重の大きい液。また、二つ以上の液の比重を比べたときに、その大きい方の液。鉱物や結晶粉末などの比重を測ったり、混合物を分離したりするのに用いる。四塩化炭素・ローバッハ溶液など。→軽液
*7 軽液
コトバンク
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