「台湾のデジタル民主主義:ラジカルトランスペアレンシー(徹底した透明性)とは」 鈴木達治郎氏 2020年8月24日

2020年8月24日

「台湾のデジタル民主主義:ラジカルトランスペアレンシー(徹底した透明性)とは」

鈴木達治郎氏

長崎大学 核兵器廃絶研究センター 前副センター長

はい、それでは始めたいと思います。

今日のお話は、先週 岩田先生がお話されたラジカルトランスペアレンシーのちょ っとフォローアップということで、私も専門ではないので皆さんからぜひご意見を 伺いたいんですが、

その中心になっているのは、

・台湾デジタル大臣のオードリー・タンっていう方なのですが、 この方面白い方で、

・まあ、もちろん若いのですが、

・中学校を中退して、学歴はほとんどない、ということですけれども、 ・もう当初から天才的なソフトウェアなんかを発明されておられて、 19歳で、シリコンバレーでソフトウェア会社を起業された。

・それで、途中で、男性から女性に変わられた、という、

現在は、Miss Tang と言われているんですけれど、女性の名前に変えて、

それで、後でお話する、

・33歳ときの「ひまわり学生運動」(*1)に参加、

が決定的になった、ということですね。

それで、ちょっと今日お話したいところは、具体的にはどういうことをやっている のか、というのを、いくつか例を挙げてちょっとご紹介したいんですけど、

これは、あくまでも私があちこちで拾ってきたものなので、本当に実態を調べたわ けじゃないのですが、面白い取り組みなので、

・この〈零時政府 g0v.tw〉(*2)という取り組みですね。

それから〈ハッカソン〉(*3)、これも有名ですけれども、実際に政策に取り入 れる仕組みとか、

それから、

・オンラインで法案ができる〈vTaiwan〉(*4)とか、

・〈フェイクインフォメーション調査室〉とか、

皆さん、有名だった、

・〈マスク在庫マップ〉は、彼が全部中心になってやっていたわけです。 この「ひまわり学生運動」というのと、〈g0v〉を紹介したいのですが、

「ひまわり学生運動」は、2014年、6年前に、政府の法案に対抗して、学生たちが本 会議中に突入して占拠した、という事件なんですが、

このときに、彼は既にこの〈g0v〉というのを作っていて、中にいる学生たちと政 府、あるいは、関係者、一般の方々との繋ぎ役、プラットフォームを作って、実際 に合意に達することができた、という、

これが彼にとって非常に大きな体験なのですが、

そのときの〈g0v〉というプラットフォームは、

2012年に作られたもので、「政府を『フォーキング』する」というふうに書いてあ りますが、どういうことかというと、

政府のやっていることを、民間で、インターネットのこのバーチャル上で、全部情 報公開してしまう。

それについていろんな意見について議論できるような場を作った、ということで、

これが、当時の「ひまわり学生運動」に非常に貢献した、というふうに言われてい ます。

それについていろんな意見を拾っていき、

「ひまわり学生運動で何が変わったか」と、これ、先ほどチャットで紹介している インタビューの中でも書いてあることですけども、

占拠占拠した学生たちと、それから政府、あるいは、議員議会、それから、関係者 の方々との間で、普通であれば、リアルで、なかなか議論の場はできないのです が、かなりの方が参加して、議論することができた。

これが実現できたことが、彼らにとって非常に大きな、ここに書いてありますけど も、50万人以上の人が要望をして、合意文書ができた、ということですね。

それから〈g0vプロジェクト〉というのは、

1年に1000万人、台湾の人口の半分の人が参加しているというか、これは、政府のWe bサイトよりも多分多くの人が使ってるんじゃないかと思うんですが、

こういう実績が認められて、2014年に、この「リバースメンター」というのが大変 面白いんですが、どういうことかというと、

メンターは普通、経験のある人が経験ない人に教えますが、逆ですね、これは。 若い人たち、新しい人たちがメンターになって、

経験のある人たちに、”こういう改革をしたらどうだ?”、という提案をする仕組 みだそうです。

これを政府が持っている、ということ自体驚きですが、これに採用されたというこ とで、台湾政府のデジタル化が一気に進んだということです。

〈ハッカソン〉というのが出てきますが、ハッカソンというのは、

・これは2ヶ月に1回、1日イベントで、たくさんの方が、3分間いろんな提案をする そうです。

その提案を通じて、今度は、

・オンラインだけではなくて、オフラインも通じて、実際にプロジェクトをやって いこう、という、そういう話ですね。

・具体例

ここに挙がっているのがいくつかありますが、

・「Mengdian」実際に教育省が実現した、マンダリン英語の辞書プロジェクト、 とかですね、それからさっき言った、

・「総予算の視覚化」、

とか、

・ドイツのモバイル民主主義の概念に基づく、オンライン意思決定ツールのパイロ ットプロジェクトの「ダイナミック民主主義」とか、

・「ニュースアシスタント」とか、

こういうプロジェクトを、ハッカソンというウェブサイトでやはり実現してきてい る、ということですね。

〈vTaiwan〉、これも面白いですけども、

こうなってくると、何か政府に近くなってくるのですが、

これは

・前のデジタル大臣の方が提案されたようです。

・さっきの〈g0v〉の〈ハッカソン〉で、この大臣を招待して、この提案をしてもら う。

実際には、ここに書いてありますように、今、通常の話題であれば、通常の利害団 体や関係団体が上がって議論ができるので、それがないような新しい社会課題につ いて、この〈vTaiwan〉というのを作る、と、

実際に例えば、例として挙がっていたのが、

このUberの導入について、みんなタクシー業界とかが反対する人が当然いるわけで すが、「賛成」「反対」ではなくて、「もし導入した場合に、どういう問題が具体 的にあるか」、ということを議論してもらうプラットフォームにして、

単に「賛成か反対か」という議論をするのではなくて、「どうやって進めていく か」という場を作ったと。

これを、また、当然、全部透明にして、誰でもコメントできるようにする、という ことで、これによって実際に台湾では、「Uberの導入」の制度ができた、というこ とらしいです。

ここは、Uberのちょっと画が書いてあるのですが、ちょっと見にくいですが、

一番大事なことは、最初の「HACK PAD」と書いてある、上の方から始まって、ずっ といって最後、「Formalized Consensus」(*5)というところが、ゴールである と、

いろんな、どうしても二極分化になる議論を、合意できるところを見つけていこ う、と。

タンさんのインタビューで、私、聞いたのですが、インターネットで見ていたので すが、

”反対される方はどうするのですか?”、という、”どうやって抵抗勢力を乗り越 えるのですか?”、という議論の質問をインタビューアーが出したときに、

彼は、”私は賛成でも反対でもないような立場で、「何が問題なのか」、「何をど うすれば乗り越えその問題になるか」という前向きな議論をすることで乗り越えて いく。しかも「そのための必要な情報は全部公開する」”、ということです。

そして、”反対する、と、反対する人たちの「何が問題か」という情報を全部公開 してもらう”、と、

こういうことでやってきたということですね。

〈総統杯ハッカソン〉(*6)というのは、

これは、

・実際に、やはり、アイディアを作ったら、

・アイディアを競争させて、

・台湾の政府が、選ばれたものについては実際に12ヶ月以内に政策にすると約束し て、

法律も改正される、

さっきのuberなんかもそうだと思うのですけれども、

こういうことが、実際に台湾では行われている。

もう一つですね、

・嘘の情報を、これをどうするか?ということを、彼は真剣にインターネットに流 れるいろんな嘘の情報をどうチェックするかというので、

・台湾ファクトチェッキングセンターと協力して、デマが出てきたときに、それを 非難するのではなくて、あるいは削除するのではなくて、

・それを面白おかしく、みんなに、いろんな方にわかってもらうようにする、と、

その時も大事なことは、「ファクトを公開していく」と、削除するのではなくて、 公開していく、という方針でやっている、と、

これが、最後の、彼らのメッセージですけど、さっきのインタビュー出てきますけ ども、

とにかくこの「徹底したと透明性」で、大事なことは、

「噂」とかですね、「根拠のない意見」とかっていうのではなくて、「事実」、こ れをとにかく早く世の中に広めることだ、と。

そのために、インターネットを、デジタル化というのはすごく大事だ、ということ をおっしゃっていました。(*7)

私の発表はこれまでですが、

これで台湾のやり方、このタンさんのやり方について、ぜひ皆さんのご意見を伺い たいと思います。

今日の発表、私はここまでです。

はい、ありがとうございました。

(*1)ひまわり学生運動

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B2%E3%81%BE%E3%82%8F%E3%82%8A%E5%AD%A6%E7%94% 9F%E9%81%8B%E5%8B%95

〈Wikipedia〉

(*2)零時政府 g0v.tw

g0v 台灣零時政府

〈零時政府 g0v.tw サイト〉

g0v

https://en.wikipedia.org/wiki/G0v

〈Wikipedia〉

台湾のエンジニア集団が「政治」で活躍できるワケ

オードリー・タン氏も活躍したコミュニティの今

台湾のエンジニア集団が「政治」で活躍できるワケ
台湾のシビックハッカーのうち、ソフトウェアのソースコードを開放する〈オープンソース〉に関心のある者が集うコミュニティから生まれたのが〈g0v〉だ。設立からちょうど10周年になる。数字のゼロを使った〈g0v〉…

〈東洋経済オンライン〉

(*3)ハッカソン

ハッカソン

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%83%E3%82%AB%E3%82%BD%E3%83%B3 〈Wikipedia〉

台湾オードリー・タン「ハッカーとしての素顔」

オープンソースとシビックテックへの思い

台湾オードリー・タン「ハッカーとしての素顔」
オードリーがデジタル担当大臣として入閣した2016年からさかのぼること4年前に始まり、彼女が今でも参加し続ける、シビックハッカー・コミュニティ〔g0v(零時政府)〕(ガヴ・ゼロと読む。以下〈g0v〉と記載)。…

〈東洋経済オンライン〉

(*4)vTaiwan

https://www.vtaiwan.tw/

〈vTaiwanサイト〉

台湾オードリー・タン「透明性」への驚異の信念

「討論プラットフォーム」の経緯から見えること

台湾オードリー・タン「透明性」への驚異の信念
「会議は踊る、されど進まず」という言葉があるように、1つの議題に対して、立場や価値観の異なる人々が話し合い、答えを出すのはとても難しい作業だ。けれど台湾では、それをデジタル活用によって大きく前に進め…

〈東洋経済オンライン〉

(*5)Formal consensus

Formal consensus

https://en.wikipedia.org/wiki/Formal_consensus

〈Wikipedia〉

(*6)総統杯ハッカソン

【オードリー・タンの仕事】総統杯ハッカソン(2018年〜現在)

https://note.com/yaephone/n/n6c29f0bedb6f

〈近藤弥生子 | 台湾在住ノンフィクションライター note〉

「相互信頼が基盤」、オードリー・タン氏が進める台湾のデジタル民主主義とはhttps://xt ech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01806/100800004/

〈日経XTECH〉

(*7)

【全文】オードリー・タン独占インタビュー「モチベーションは、楽しさの最適化」2020.0 7.28

【全文】オードリー・タン独占インタビュー「モチベーションは、楽しさの最適化」 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
6月29日に台湾デジタル担当政策委員、オードリー・タン(唐鳳)にオンライン・インタビューを行った。記事は、Forbes JAPAN No.73(7月25日発売号)の巻頭に掲載されている(オードリー・タンが語る「欠陥は、あなたが貢献するための...

〈Foabes JAPAN〉

 

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