8月4日(火) 江上広行氏 「銀行4.0とバリューベースバンキング」へのコメント

コラム毎のコメント紹介

コラム

皆さんこんにちは。江上広行と申します。よろしくお願いいたします。機会をいただいてありがとうございます。

昨日初めてこの会に参加したんですが、とてもいい場所なので、改めて、いいところにお呼びいただいたんだな、と思ってます。それでは早速入っていきたいな、と思います。

URUUは自分の経営してるコンサル会社の名称です、JPBVについてはこの後お話しさせていただきます。

見た目、金髪で怪しいですが(笑)、元々銀行員をやっていて、今も金融機関向けのコンサルが多いですかね。組織開発系の仕事が多いです。いわゆる「対話」とか「場づくり」とか、リーダーシップ教育とか、よくそういうことをやってます。

最近「誇りある金融」という本を書いたんですけれども、そのなかで触れている世界中で起きている「バリューベースバンキング」という活動のご紹介と、今日本でそれに関係する活動をしているので、そのお話と、皆さんへの投げかけなどができたらいいかな、と思ってます。

私はもともと銀行員です、ずっと間接金融をやってきました。直接金融はそんなに得意ではないです。いわゆる「普通の銀行員」なのですが、間接金融の特徴って、自分のお金がどう使われてるか見えない、というか、お金がどんなふうに影響を与えるか、というのが不透明、というのが、ある意味、デメリットですがメリットでもあります。それは「信用創造」という「お金がお金を何倍にも増やしていく」というしくみです。

落語に“風が吹くと桶屋が儲かる”って、皆さんご存知だと思います。

“風が吹くと、目にホコリが入って目が見えなくなって、三味線弾きになって、猫が捕まえられて、ネズミが繁殖して、桶屋が儲かる”という話なんですけれど、結構、金融の世界ってこういうことが起こっています。

たとえば、皆さんがお金を貯金すると、アフガニスタンが外で遊べない、って、想像できますかね?これは現実に起きていて、日本のいわゆるメガバンクのいくつかは、いわゆる「武器産業」に結構、融資をしています。日本の銀行は国内の資金運用が縮小しているために海外に運用先を求めます。そのひとつとして「武器」としてのクラスター爆弾の事業者に結構融資が行っていることが、数年前に問題になりました。クラスター爆弾という残酷な粒々の爆弾で、それって不発弾がすごく残ります。それがあちこちに散らばっているので、アフガニスタンの子供が外で遊べない、みたいなことが、こんなことが実際に起きています。

このURL、後でもしよろしければ、PAXという団体で調べると出てくると思うんで、見ていただきたいと思うんですけど、これは、クラスター爆弾に限らない問題です。日本のメガバンクは石炭火力発電や、東南アジアの環境破壊を産み出すパームオイルなんかの輸出の事業者にも融資しています。

特にUNEP(国連環境計画)なんかでは問題視されるのですがに、日本はあまり我々がそのようなことを意識することはない。でも、そのお金って、実は僕たちの何気なく預けている預金です。間接金融とは運用先が塀の向こう側にあって、実はこういうふうに、いろんなお金が知らないところで資金が運用されています。まあ、僕たちは自分の預金の安全な運用と安定した利回りをやっぱり銀行に求めますけれど、銀行は加害者のように見えますが、そのことに無自覚な預金者としての我々も加害者の一部であるのかもしれません。
かつ、そのことに対して我々はかなり無頓着です。そのことに課題を投げかけている人がいます。スペインのバルセロナにいるGABVの事務局長りマルコスさんっていう人が、TEDでこう話しています。

「Are you ready to become Bankers?」て、これはどんな意味かっていうと、

「皆さん一人ひとりは預金者としてとしてどこの銀行を選ぶかに責任をもっている」ということです。

それで、「私、単に銀行に預金預けているだけなのに、何故銀行員ですか?」というのは、「あなたがどこの銀行にお金を預けているかによって世界が変わる」という意味でねあります。マルコスは同時に、「銀行は預かったお金をどう運用しているか、透明にすることによって世界は変わります」というメッセージを投げかけています。

日本の銀行は透明性がなかなか少ないのですが、世界には、透明性を保ちながら、預かったお金をどう運用してくか、ということをちゃん預金者にオープンにしている銀行があります。リーマンショックの後にできた「GABV」という団体、「The Global Alliance for Banking on Values -価値を大切にする銀行」には世界に今64の銀行が加盟しています。

そして、ここに加盟している銀行は、融資先に対してESGとか環境とかソーシャルなものに融資をするところに特化しており、その内容を預金者に開示をしています。預金者はその意図に沿ってお自分の金を預けています。

GABVに加盟している金融機関は途上国ではマイクロファイナンスが多いのですが、欧州などですと、やはりグリーンファイナンスか、もしくは医療、農業とか、結構特化した小さな信用組合とか、非上場の金融機関が多いです。

GABVには6原則というものがあります。

一つは、「トリプルボトムライン」これは、まあ、ESGに近い考え方で、皆さん、ご存知かもしれません。

それから、「実体経済に即している」
世界の間接金融の大体6割くらいは実体経済じゃない、いわゆる「カジノ取引」と揶揄されますけれど、ここでは実体経済に即した融資を大切にしていてGABVに加盟するためには自分の資産の残高がどれだけ実体経済に影響しているか、開示する必要があります。

そして、「透明である」ということ。トランスペアレンシーは今お話しした通りです。

もう一つは「ロングタームレジリエンス」です。

とは言え、銀行ってちゃんとしたリスク管理とか運用をしないと長期的なレジリエンスがないので、そこを保つということ「クライアントセンタード」というのは、これは、「お客様第一」という意味を超えて、お客様のwell~beingに対して第一、という考え方です。

そして、真ん中に「Culture」があります。これらの原則が組織文化となっている」ということを指します。GABVに加盟するためにはこれらについてかなり厳しい審査を受けて加盟できる、ということになります。

GABVはUNEPのがさ作成した国連銀行原則にも影響を与えています。

また「環境金融」のところにも影響を与えています。特にオランダのトリオドス銀行という銀行がGABVに加盟してるのですけれど、そこは環境金融について中心的な役割を持っています。

私はGABVという団体を3年前に知った時に、日本にこれを広げたい、と思いオランダまで行って、この団体の代表のトリオドス銀行のピーターボームに会いにいきました。

「日本でこの考え方を広げたい」という話をしましたところ、「じゃあ、日本にそれに加盟できる銀行があるのか?」と。

唯一、加盟できそうだ、って思ったのが第一勧業信用組合さんです。東京の四谷にある小さな信用組合なんですけれど、すごくコミュニティにベースにした、実体経済に即した活動をしています。新田信行さん、当時は理事長で、今は会長になりましたけれど、その新田さんとずいぶんやりとりをして、実際に2年ほど前にGABVに加盟するサポートなりました。加盟するだけではなく、日本にこういうことを広げよう、ということで、今、大体20以上の地銀さん、信金さん、信組さんで組織して、日本に「価値を大切にする金融」、先ほど言った6原則を日本で広げるための活動をやっています。

それがJPBV、先ほどの「価値を大切にする金融実践者の会」という団体で私が代表理事をやっています。

「あなたの大切なご預金、どこにご融資してるかご存じですか?」みたいな、このようなポスターを出して、日本でもキャンペーンをするんですけれど、ほとんど無関心のようですね。

GABVに加盟している銀行は、いろいろな銀行があってすごく面白いのですけれど、例えばドイツのGLS銀行は、バンクシュピーゲルという機関紙の中に、この期間にどんな事業をしてるか、と全て冊子で公開して、預金者のコミュニティが作られています。

オランダのトリオドス銀行は、トリオドス銀行のホームページに行くと、あなたの住所の近く、を押すと自分のお金がどこに融資したかをマップが表示されて、そこをクリックすると、その事業内容が見えるしくみだったりとかがあります。あと、これはハンガリーのマグネットバンクですけど、ここは預金をするときに、アカウントが5種類に分かれていて、自分はどの事業に融資をしたいかをおらぶことができます。農業に融資したいか、環境に融資をしたいか、によって、口座を自分で選べる形になっているのです。

また、それだけじゃなくて、預金金利を自分で設定できるんですね。

だから、預金金利を放棄すれば、融資の金利も安くなる、っていうしくみ。もっと言うと、口座維持手数料って海外の銀行は普通取るんですけど、それも自分で設定することもできる。ある意味、ホントの運営費だけを除くと、あとは預金者が全て意思決定を持っていて、で、利益が出ると還元されて、その地域の事業に寄付として与えられる、みたいな、そういうシステムを作っている銀行です。

カナダのバンシティは、従業員のエンゲージメントとかも、もちろん、環境や、多様性を大切にしている銀行です。ここの年次報告書を見ていてすごく面白かったのは、「うちは先住民の上級管理職を一人もいません、ごめんなさい」とレポートに書いてあるんですね。

多様性を大切にしているから、できてないことを、ちゃんと、「できてない」って開示している。それで、ここのレポートには「できてない」がいっぱい書いてある。チャレンジしながらちゃんと正直に「できてない」と開示していもます。バンシティの報告書は統合報告のという開示の先駆的な取り組みとしても有名です。

『バンク4.0』っていう考え方を紹介します。今までの決済仲介、信用創造みたいな機能を1.0、とすると、銀行ってそこから二つに分かれていって、一つは「カジノ金融」と言われるリーマンショックに代表される実体経済を離れて架空の金融を起こした、非実体経済の金融に流れていったなですけれどこれが、2.0。もう一つは、「社会的な責任」とか、「倫理的な銀行」という流れとしての社会的責任を果たそうとする銀行が3.0です。GABVが目指しているものは、そのどちらを超えていった4.0です。リーマンショックの後に何が起きたかって言うと、ビッグバンクでさえも、行き過ぎた短期収益思考から、サスティナビリティやESを重視する方向に寄っていったんですが、日本の銀行だけが取り残されてしまった。日本は逆に、なんていうか、短期利益でいこう、とか、資本効率の方に行ったので、むしろ、世界の流れから離れていった。

そして、バリューベースバンキングっていうのは、この右上に向かう方向のことを言います。これは利益、経済的リターンを保証しながら、社会課題も同時に解決していく、という具合になります。

で、実際にここ数年の影響見てると、たぶん、ESGとかSDGsの影響もあると思うのですけれど、こういう銀行とバリューベースバンキングの銀行と、一般的なメガバンクとの投資のパフォーマンス見ると、特に2015〜2016年あたりからもう明確に差が出てきて、パフォーマンスがアウトパフォームしている、という状態です。

そして、これは投資の領域でもちょっと面白くて、「インテグラル・インベスティング(AQAL)」という考え方も出てきていて、「インテグラル」っていうのは「自分の内面、個人の内面」とか「美的価値観」とか「組織の文化」とか、そういう「人間の内面」、「組織の内面」と、外面の「社会的影響」とか、「行動」とかと統合していく考え方を『インテグラル理論とか、シンキング』と考えているんですけれど、それをベースにした投資の考え方なんかも、今すごく大事だな、と思っています。日本の金融の流れを見ると、どちらかというと外面、外面の行動とかルールをコントロールする側の、右側でコントロールする、というのが金融行政のほうに流れてきたと思うんですけれど、左側の個人の価値観とか組織文化というのがないがしろにされてます。今、流れ的には「真・善・美の統合」の流れに来ていて、金融庁が、「心理的安全性」とか「対話」とかって言い始めているのは、この右から左への流れが来ているということでもあります。ただ、「美」の領域がまだ手付かずです。

チャールズアイゼンシュタインが「聖なる経済学」という本で「バンカーとはお金を美しく使う人を探してくる人のことをいう」と述べています。これを「美しさ」を取り戻した時に、本当のバリューベースバンキングがやってくるのではないかと思っています。という話をさせていただきました。

短時間で、ババっと早口で話したので、どこまでお伝えできたかが不安ですが、この後の対応の中で拾っていきたいと思います。

ありがとうございました。

チャット

a) ありがとうございます、非常によいと思いました。今後、ブロックチェーンなどの技術により、トレーサビリティが保たれるかとは思いますが、逆に、ブラックマネーの流れなどが同時に浮き上がることなどは起こりえるのでしょうか?
b) ESG投資に進む場合、CO2削減に付いては評価し易い環境が整ってきている様だと思ってます。資源マテリアルの循環についても価値観を共有できる市場が生まれるのでしょうか?
c)「良きこと」への融資とそれ以外への融資は、明確に分けられているのでしょうか?
d)また、それぞれの融資額比率はどういう具合になっていますか?
e) 単に融資比率と言っても分かりにくいですが、例えばGABV全体で、など。
f)初耳のことばかりで驚きました。ありがとうございました。
g) ありがとうございました。とても勉強になりました。
h)ありがとうございました。このような視点のテーマも重要だと感じました。
i)本日は、貴重なお話ありがとうございました。大変勉強になりました
J)金融機関における善き行いとESG,地元の北陸銀行がそこにかかわっていることに興味を持ちました。
K)ありがとうございました。とても勉強になりました。
l)銀行変えてもいいと思いました。有り難うございました。
m)今日のお話は、全くの初耳でした。これが普通の銀行のビジネスの流儀になると、相当に世の中が変わると思います。しかし、規模が大きくなると障壁も高くなり非常に困難なようにも思えます。
n)講演ありがとうございます。日本でもこのような投資銀行への興味が増大するような気がしますが、顧客が参加しやすいような宣伝や仕組が必要だと思います。
o)金融にも新たな動きがあることを知ることが出来、勉強になりました。Banking on valeu という新たな流れは出てくる可能性はあるように感じられました。 多くの人が知らないように思います。 退出させて頂きます。
p)オンライン会議がバッティングし、途中入室失礼しました。YouTube配信で、拝聴しなおします。ありがとうございました。

 

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