「普遍的価値とは何?」 後藤敏彦氏 2024年2月26日

2024.2.26

「普遍的価値とは何?」

後藤敏彦氏

〈サスティナビリティ日本フォーラム 代表理事〉

はい,早速始めさせていただきます。

表題ですが、

「普遍的価値とは何?」としたのは、「普遍的価値とは何か」と書くと、何かちょ っと、上の立場から、”こうこう、こうだ”、と説くような感じになってしまうの で、そうではなくて、「本当に、普遍的価値って何なのでしょうね?」っていう、 クエスチョンマークのままの、今日は話題提供です。

実は資料をたくさんつけたのですが、ご説明することはほとんどありません。

問題意識はですね、今、いろいろ分断で、戦争とかいろんな状況であるわけです。

やっぱり、ここで一番問われているのは、「普遍的価値とは何か」が問われている のではないかというふうに思います。

ここでもいろんな議論が非常になされているわけですが、「民主主義」とか「自 由」「平等」「友愛」、はたまた、「正義」とか「平和」とか。

もう一つ、やはり「民主主義」は、「国境の壁云々」と書きましたけど、実は、 「壁なくして成立しない」と思うのです。

原田さんは、「民主主義は運動だ」と言っている、それも一つの考え方で、私なり には、”そうだろうな”、とは思っているのですが。

いずれにしろ、ある「壁」がないと、「民主主義」は現実には成立していないわけ です。

このことをどう考えるかっていう問題で、そういう中で、現代社会、特に「日本で 追求すべき普遍的価値とは何なのだろうか?」。

今日はそのことを議論したいなと思って、以下には議論のための参考資料をつけま した。

これは、私のテーマは「人権」が多くて、「普遍的価値」に比較的縁が深いので、 過去にこんなことを述べました、ということの紹介です。

これは置いといて、

アリストテレスのことを、今回もちょっとだけ。

『アリストテレスの国家論』というのは、二つに分かれて、一つは、「市民全体の 利益追求」、もう一つは、「自分たちの利益追求」という形です。

”容認されるもの”としては、やはり、「市民全体の利益追求」で、当時は三つの 体制を彼は考えたわけです。

・「王政」

・「優秀者支配」

・「国制」、これは今でいう「共和制(Republic)」なのです。

”否認されるべき逸脱体制”としては、

・「僭主独裁制」

・「寡頭制」

・「民主制(衆愚制)」

というようなことが書かれているわけです。

現在の世界を見てみると、「王政」はないことはないのですが、「立憲君主制」と いうのは、ここにはないわけで、”「王政」と「共和制」のコンバインしたもの” みたいなのかな、もしくは、「王政」と「優秀者支配」、かも。

プラトンは、むしろ、この「優秀者支配」、「哲人支配政治」というものを、むし ろ支持していたのですが、こんなようなことがあるわけです。

今の政治は、そういう意味で言うと、(いわゆる「民主主義」にもいろいろあるわけ ですが)、「民主制」か、「Republic」か、「立憲民主」、「立憲君主制」、日本と かイギリスですね、三つの種類かな、と。

その三つの種類が、それが、それぞれが認められて、現実、認められているわけで すが、それが、要するに、”市民全体の利益追求しているのか”、”自分たちの利 益追求しているのか”の、このへんの差は非常に微妙だなと思っています。

「日本は今どうなのだ?」と。

ところで、「Republic」(*1)っていうのは、「res publica」(*2)っていう ことで、「公益」、「民衆」というのというような、「公益」とか「公共」という 意味で、

それが政治的制度では、1人の支配者じゃなくて、「代議民主制」みたいなことをい うのが「Republic」ということのようなのですが。

「Republic」の、表(おもて)が、ラテン語の「res publica」で、反対が、「res privata 」(*3)「res」、プライベートのラテン語の「 privata」「privatu s」、ということらしいのですが、 (*4)いずれにしろ、日本はどうも、最近の 自民党支配というのは、”否認される「寡頭制」”と思っています。

決して、実は、貧しき者のために政治をやっているとも思えないので、何となく、

「寡頭制」と考えざるを得ない。一応、天皇様がいますので、「立憲君主制」なん で、”「王政」と「寡頭制」のコンバインみたいなものかな?”、というような感 じを受けております。

あとは、本当に資料ですから、簡単に、

〈権利章典〉ですよね。

これはもう、基本的に、”「議会」が「国王」の権利を制限するよ”、ということ で、このときの議員は、「貴族」と「ジェントリー」ですよね。

それから、〈アメリカ独立宣言〉の普遍的価値は、『平等』、『「生命」「自由」 および「幸福」の追求権』とか、ですね。

このときの「人間」は、「白人」で、「黒人」は対象外、ということです。

それから、〈フランス人権宣言〉は、『「自然で」、「譲り渡すことができず」、 「神聖な」人の諸権利を表明する』ということでした。

どんな権利かというと、やはり、『「自由」かつ「平等」』とか、『主権が国民』 だとか、『「思想の自由』とか、『所有権の不可侵』とか、こんなことが書いてあ るわけです。

〈共産党宣言〉も、ある国では普遍的価値とすれば、宣言にはこの10項目が書かれ ている、というようなことですね。

それから、現代世界に行くと、〈国連憲章〉は、『基本的人権』と『人間の「尊 厳」および「価値」』を改めて確認し、ということで、『「人種」、「性」、「言 語」、または、「宗教」による差別のない』、というようなことが、国連の憲章で は、どうも普遍的価値と認めているようですね。

〈世界人権宣言〉も、「自由」、「平等」で、あとは、

・「自由権」

・「参政権」

・「社会権」、等

があるわけです。

それから、〈日本国憲法〉は、「主権在民」というようなことがあって、これが、 「人類普遍の原理」だと、日本国憲法は言っているわけです。

「全世界の国民が等しく恐怖と欠乏から免れ平和のうちに生存する権利を有するこ とを確認する」とも述べてます。

したがって、「ガザの人々」とか、「ウクライナの人々」がいることは、日本国憲 法から見ると、やっぱり、”許されないことだ”、と、こういうふうに言えるかも しれません。

それから、ここが『国民の「権利」および「義務」』というようなことで、

ごちゃごちゃ、ごちゃごちゃと、書かれていて、この第三章は、全部ほとんどそれ に費やされていて、

「信教の自由」、

「集会結社の自由」とか、

「移転の自由」とか、

「学問の自由」とか、

この辺のことが、「学術会議の委員を選ぶのを菅総理が拒否した」とか、この辺は 憲法とどういうふうに関係をするのか、こういうようなこともあるわけです。

更にこれ、もう、ずっと国民の権利があります。

それから、まあ、ちょっと古くいくと、〈五箇条の御誓文〉とあるのですが、これ も、まあ、なんか、これは、天皇が主権の頃ですので、その天皇の統治のための、 まあ、言ってみれば、”戒め”みたいなものかな、とも読めます。

それから、〈企業の「倫理」とか「行動指針」〉とはどんなもの、というと。

よく日本で言われる、「三方よし」、なんかですね、「売り手よし」「買い手よ し」「世間よし」で、これも、まあ、悪くはないのですが、地球の今の状況を見る と、十分では、必ずしも言えないな、と思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、細かいことは抜きますけど、〈スチュワードシップ・コード〉というの が、「金融機関に対するコード」として、2014年に日本では作られている。

それから、〈コーポレートガバナンスコード〉が2015年に作られて、もう既に2度改 定されているのですが、去年、[OECD]と[G20]は、〈Principles of Corporate Governance〉(*5)っていうのを、また大きく改訂しております。

この辺は非常に、わずか十数年の間に何回も改定する、というぐらいで、このコー ド自体が強化されてはいるのですが、揺れ動いている、という証かもしれません。

それから、これが〈Principles of Corporate Governance〉の中身ですが、

5番目には「Responsibilities of the board」(*6)というようなことも書かれ ているわけです。

それから、AIの世界で、これもOECDが、〈Values-based principles〉みたいなこと 書いていて、ここには、

・Inclusive, Growth, sustainable development and well-being とか、

・Human-centred values and fairness

・Transparency and explainability

・Robustness,security and safety

・Accountability

と、こんなようなものです。

・米国では、〈アシロマ原則〉(*7)なんてあります。

これ、イーロン・マスクが1000万ドルを寄付して、アシロマで16⁻17年に侃侃諤諤や った原則みたいなものもあるようです。

・総務省も、〔AIガイドライン比較表〕と、

〔比較表〕ですから、「どこがどう言っている、どう言っている」という表になっ ているので、勉強にはいいのですけど

”日本国で、AIについてはどう考えているか”、というのは、あるのか、ないの か、私は、そこまで詰めていませんが、

まあ、こんなものがある、と。

経団連も〈企業行動憲章〉で、こんな、「情報開示」とか「公正な事業慣行を」と か、こんなようなことを言っている、ということです。

それから、〈個人の徳目(Virtues)〉(*8)

というようなことで言いますと、

・古くは儒教で

〈五常の徳〉

「仁・義・礼・智・信」

とか、

・ギリシャでアリストテレスの

〈四つの枢要徳〉

「正義・勇気・知識・節制」

みたいな徳目があります。

それから、〈聖徳太子の十七条憲法〉。

これも、久しぶりにパラパラと読んでいますと、どうもこれは「官僚の心得」みた いなことが結構書かれていて、「統治、統一のための倫理」みたいなものですね。

日本では、「和を以て貴し(たつとし)と為す」ということが、すごく言われてい るのですが。

聖徳太子が書いたのは、どうも、十七条を見てみると、官僚どもを戒めている項目 が非常に多いですね。

これも、そうです。

それから、

新渡戸稲造が、〈武士道〉と言って、

世界に、”日本はこういう徳目だ”、と言ったのが、

・義

・勇

・仁

・礼

・誠

・名誉

・忠義

と、こんなようなことが、日本ではあるのだ、と、

こういうふうにおっしゃったわけでした。

あと、日本人の庶民はどんな徳目か? 、〈仏教〉もあるわけですが、 滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」というのが(江戸時代に)大流行したのですね。 これで、

〈八徳〉ということで、

「仁・義・礼・智・忠‣信・孝・悌」と、

こんなような、八犬伝で深く人口に膾炙(かいしゃ)したといわれております。

これ、岩田先生のところの「アスペン研究所」(*9)というところの、

世界の哲学界の巨人だった今道友信先生(*10)が、『エコエティカ』(*1 1)という本に書いているのですが、そこで、現代の徳目としては、

basicには

1.「勇気」

2.「忠」

3.「謙遜」

4.「責任 レスポンス」 「応答する Responsibility」

がある。

その他に、新しい徳目として、

5.「異邦人愛」

今、この「異邦人愛」っていうのは、これの逆が、「異邦人嫌い」とか、「異邦人 恐怖症」での「Xenophobia」(*12)、です。

これ、もう、アメリカ、ヨーロッパ全て西洋先進国で、移民に対する、アメリカの 場合、黒人に対する「Xenophobia」というのが、「異邦人嫌悪症」というか、「恐 怖症」というか、ですね。

今道先生は、”現代社会では、「異邦人愛」というものが重要だ”、と述べられて いました。

6.「定刻制」

”時間を守れ”、とか、

7.「国際性」

だとか、

8.「語学と機器の習得」

”語学をちゃんと習得しろ”、とか、

9.「気分転換」

”気分転換で音楽とか芸術を楽しめ”、と、

こういうようなことを、今道先生はおっしゃっておられるわけです。

それから、企業関係ではあるのですが、これちょっと「個人」じゃなかった、ごめ んなさい、「企業」のほうに移るべきですが、〈ISO 26000〉では、

やはり、こんなようなことも言っている。

というようなことで、

お見せしましたのは、別に私が解説するのではなくて、こんなことが、世界で、西 欧でも、東洋でも、それから、企業世界でも、ごにょごにょ、ごにょごにょ言われ てるのです。

さて、じゃあ、もう一度立ち返ってみて、

・「今、現代社会で普遍的価値って何なのだろうか?」と、

・「民主主義」、もう日本は、民主主義国家、

世界中は、建前は、どうも、さっき言いましたように、「民主主義」か、「Republi c」か、「民主制」と「Republic」、非常に境目が曖昧なのですが、あと、「立憲君 主制」ですよね。

加納先生が、「民主主義」と、「独裁」とか、「侵出覇権」「独裁主義」と言われ ました。

しかし、「独裁国家」も政治制度としては、必ずしも、「寡頭制」とか「王政」で はないわけで、制度的には、どうも「選挙」とか、”インチキ選挙”であっても、 「選挙」はやったりしているわけですね。

やはり私は、「民主主義」というのは一つの普遍的価値なのだろうと思うのです が、

・やっぱり、”壁がなくして成立しない”ということをどう考えるか? というような問題と、

やっぱり、「普遍的価値って何なのだろうな?」ということを、 ここで、結構議論されているのですが、改めて、真正面から、

「普遍的価値って何なのだろうな?」ということを、ちょっと議論をしてみたい な、と思って話題提供とさせていただきました。

以上です。

(*1)republic

republicとは

英語「republic」の意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書
「republic」の意味・翻訳・日本語 - 共和国、共和政体、(フランスの)共和制、(共通の目的を持つ人の)…社会、…界|Weblio英和・和英辞書

〈weblio〉

(*2)res publica

republic の語源

republic の意味、語源、由来・英語語源辞典・エティモンライン
republic の意味: 共和国; 公共の利益を重視した国家; 市民が選んだ代表者によって運営される国家...

〈Etymonline〉

レス・プブリカ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%9 6%E3%83%AA%E3%82%AB

〈Wikipedia〉

res publicaと共和国

三 森 のぞみ

https://waseda.repo.nii.ac.jp/record/77663/files/WasedaDaigakuItariaKenkyuj oKenkyuKiyo_12_4.pdf

〈waseda.repo〉

近代のフランス政治思想における共和主義 ―モンテスキュー、ルソーとトクヴィル ―

中谷 猛

https://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/kotoba03/nakatani.pdf 〈立命館大学〉

(*3)res privata

patrimonium and res privata

https://oxfordre.com/classics/display/10.1093/acrefore/9780199381135.001.00 01/acrefore-9780199381135-e-4783

〈Oxford classical dictionary〉

(*4)privateの語源

private の語源

private の意味、語源、由来・英語語源辞典・エティモンライン
private の意味: 私的な; 個人的な; 公にされていない...

〈etymonline〉

プライベート

Privatus - Wikipedia

〈Wikipedia〉

(*5) Principles of Corporate Governance

G20/OECD Principles of Corporate Governance 2023

https://www.oecd.org/en/publications/g20-oecd-principles-of-corporate-gover nance-2023_ed750b30-en.html

〈OECD〉

(*6) The responsibilities of the board

The responsibilities of the board

https://www.oecd-ilibrary.org/sites/ed750b30-en/1/2/5/index.html?itemId=/co ntent/publication/ed750b30-en&_csp_=7a1eca165fad928a70a0300d1e07c36f&itemIG O=oecd&itemContentType=book

〈oecd-ilibrary〉

(*7)アシロマA原則

AIの脅威を防ぐ「アシロマAI 23原則」とは?その内容や重要性をわかりやすく解 説!

https://data.wingarc.com/the-asilomar-ai-principles-62350 〈データの時間〉

アシロマの原則

https://futureoflife.org/open-letter/ai-principles-japanese/ 〈future of life〉

(*8) virtues

virtuesの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書
「virtues」の意味・翻訳・日本語 - virtueの複数形。徳、 美徳、 徳行、 善行|Weblio英和・和英辞書

〈weblio〉

(*8)アスペン研究所

理事長メッセージ - 日本アスペン研究所
本アスペン研究所の設立背景や活動理念を紹介するページです。「ゲーテ生誕200年祭」に端を発するアスペン精神の起源から、ロバート・ハッチンスによる「対話の文明を求めて」のメッセージ、理事長の北山禎介氏によるリーダーシップと対話の重要性に関するメッセージも掲載されています。

〈一社 日本アスペン研究所〉

(*9)今道友信氏

今道友信

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8A%E9%81%93%E5%8F%8B%E4%BF%A1 〈Wikipedia〉

(*10)エコエティカ

エコエティカ

『エコエティカ』(今道 友信) 製品詳細 講談社
今日、生命倫理や医の倫理、環境倫理や技術倫理など、すべての分野で倫理が問い直されている。エコエティカとは、これら一切を含む「人類の生息圏の規模で考える倫理」のことで、高度技術社会の中で人間の生き方を考え直そうとする新しい哲学である。人間のエコロジカルな変化に対応する徳目とは何か。よく生きるとはどういうことか。今こそエコ...

〈講談社Book俱楽部〉

(*11) ゼノフォビア(Xenophobia)

外国人嫌悪

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E5%AB%8C%E6%82%A A

〈Wikipedia〉

外国人の人権と教育(その3) ゼノフォビアとしての外国人差別 https://www.nichibun-g.co.jp/data/web-magazine/manabito/jinken/jinken018/ 〈日本文教出版〉

 

2024.2.26

「普遍的価値とは何?」

後藤敏彦氏

〈サスティナビリティ日本フォーラム 代表理事〉

はい,早速始めさせていただきます。

表題ですが、

「普遍的価値とは何?」としたのは、「普遍的価値とは何か」と書くと、何かちょ っと、上の立場から、”こうこう、こうだ”、と説くような感じになってしまうの で、そうではなくて、「本当に、普遍的価値って何なのでしょうね?」っていう、 クエスチョンマークのままの、今日は話題提供です。

実は資料をたくさんつけたのですが、ご説明することはほとんどありません。

問題意識はですね、今、いろいろ分断で、戦争とかいろんな状況であるわけです。

やっぱり、ここで一番問われているのは、「普遍的価値とは何か」が問われている のではないかというふうに思います。

ここでもいろんな議論が非常になされているわけですが、「民主主義」とか「自 由」「平等」「友愛」、はたまた、「正義」とか「平和」とか。

もう一つ、やはり「民主主義」は、「国境の壁云々」と書きましたけど、実は、 「壁なくして成立しない」と思うのです。

原田さんは、「民主主義は運動だ」と言っている、それも一つの考え方で、私なり には、”そうだろうな”、とは思っているのですが。

いずれにしろ、ある「壁」がないと、「民主主義」は現実には成立していないわけ です。

このことをどう考えるかっていう問題で、そういう中で、現代社会、特に「日本で 追求すべき普遍的価値とは何なのだろうか?」。

今日はそのことを議論したいなと思って、以下には議論のための参考資料をつけま した。

これは、私のテーマは「人権」が多くて、「普遍的価値」に比較的縁が深いので、 過去にこんなことを述べました、ということの紹介です。

これは置いといて、

アリストテレスのことを、今回もちょっとだけ。

『アリストテレスの国家論』というのは、二つに分かれて、一つは、「市民全体の 利益追求」、もう一つは、「自分たちの利益追求」という形です。

”容認されるもの”としては、やはり、「市民全体の利益追求」で、当時は三つの 体制を彼は考えたわけです。

・「王政」

・「優秀者支配」

・「国制」、これは今でいう「共和制(Republic)」なのです。

”否認されるべき逸脱体制”としては、

・「僭主独裁制」

・「寡頭制」

・「民主制(衆愚制)」

というようなことが書かれているわけです。

現在の世界を見てみると、「王政」はないことはないのですが、「立憲君主制」と いうのは、ここにはないわけで、”「王政」と「共和制」のコンバインしたもの” みたいなのかな、もしくは、「王政」と「優秀者支配」、かも。

プラトンは、むしろ、この「優秀者支配」、「哲人支配政治」というものを、むし ろ支持していたのですが、こんなようなことがあるわけです。

今の政治は、そういう意味で言うと、(いわゆる「民主主義」にもいろいろあるわけ ですが)、「民主制」か、「Republic」か、「立憲民主」、「立憲君主制」、日本と かイギリスですね、三つの種類かな、と。

その三つの種類が、それが、それぞれが認められて、現実、認められているわけで すが、それが、要するに、”市民全体の利益追求しているのか”、”自分たちの利 益追求しているのか”の、このへんの差は非常に微妙だなと思っています。

「日本は今どうなのだ?」と。

ところで、「Republic」(*1)っていうのは、「res publica」(*2)っていう ことで、「公益」、「民衆」というのというような、「公益」とか「公共」という 意味で、

それが政治的制度では、1人の支配者じゃなくて、「代議民主制」みたいなことをい うのが「Republic」ということのようなのですが。

「Republic」の、表(おもて)が、ラテン語の「res publica」で、反対が、「res privata 」(*3)「res」、プライベートのラテン語の「 privata」「privatu s」、ということらしいのですが、 (*4)いずれにしろ、日本はどうも、最近の 自民党支配というのは、”否認される「寡頭制」”と思っています。

決して、実は、貧しき者のために政治をやっているとも思えないので、何となく、

「寡頭制」と考えざるを得ない。一応、天皇様がいますので、「立憲君主制」なん で、”「王政」と「寡頭制」のコンバインみたいなものかな?”、というような感 じを受けております。

あとは、本当に資料ですから、簡単に、

〈権利章典〉ですよね。

これはもう、基本的に、”「議会」が「国王」の権利を制限するよ”、ということ で、このときの議員は、「貴族」と「ジェントリー」ですよね。

それから、〈アメリカ独立宣言〉の普遍的価値は、『平等』、『「生命」「自由」 および「幸福」の追求権』とか、ですね。

このときの「人間」は、「白人」で、「黒人」は対象外、ということです。

それから、〈フランス人権宣言〉は、『「自然で」、「譲り渡すことができず」、 「神聖な」人の諸権利を表明する』ということでした。

どんな権利かというと、やはり、『「自由」かつ「平等」』とか、『主権が国民』 だとか、『「思想の自由』とか、『所有権の不可侵』とか、こんなことが書いてあ るわけです。

〈共産党宣言〉も、ある国では普遍的価値とすれば、宣言にはこの10項目が書かれ ている、というようなことですね。

それから、現代世界に行くと、〈国連憲章〉は、『基本的人権』と『人間の「尊 厳」および「価値」』を改めて確認し、ということで、『「人種」、「性」、「言 語」、または、「宗教」による差別のない』、というようなことが、国連の憲章で は、どうも普遍的価値と認めているようですね。

〈世界人権宣言〉も、「自由」、「平等」で、あとは、

・「自由権」

・「参政権」

・「社会権」、等

があるわけです。

それから、〈日本国憲法〉は、「主権在民」というようなことがあって、これが、 「人類普遍の原理」だと、日本国憲法は言っているわけです。

「全世界の国民が等しく恐怖と欠乏から免れ平和のうちに生存する権利を有するこ とを確認する」とも述べてます。

したがって、「ガザの人々」とか、「ウクライナの人々」がいることは、日本国憲 法から見ると、やっぱり、”許されないことだ”、と、こういうふうに言えるかも しれません。

それから、ここが『国民の「権利」および「義務」』というようなことで、

ごちゃごちゃ、ごちゃごちゃと、書かれていて、この第三章は、全部ほとんどそれ に費やされていて、

「信教の自由」、

「集会結社の自由」とか、

「移転の自由」とか、

「学問の自由」とか、

この辺のことが、「学術会議の委員を選ぶのを菅総理が拒否した」とか、この辺は 憲法とどういうふうに関係をするのか、こういうようなこともあるわけです。

更にこれ、もう、ずっと国民の権利があります。

それから、まあ、ちょっと古くいくと、〈五箇条の御誓文〉とあるのですが、これ も、まあ、なんか、これは、天皇が主権の頃ですので、その天皇の統治のための、 まあ、言ってみれば、”戒め”みたいなものかな、とも読めます。

それから、〈企業の「倫理」とか「行動指針」〉とはどんなもの、というと。

よく日本で言われる、「三方よし」、なんかですね、「売り手よし」「買い手よ し」「世間よし」で、これも、まあ、悪くはないのですが、地球の今の状況を見る と、十分では、必ずしも言えないな、と思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、細かいことは抜きますけど、〈スチュワードシップ・コード〉というの が、「金融機関に対するコード」として、2014年に日本では作られている。

それから、〈コーポレートガバナンスコード〉が2015年に作られて、もう既に2度改 定されているのですが、去年、[OECD]と[G20]は、〈Principles of Corporate Governance〉(*5)っていうのを、また大きく改訂しております。

この辺は非常に、わずか十数年の間に何回も改定する、というぐらいで、このコー ド自体が強化されてはいるのですが、揺れ動いている、という証かもしれません。

それから、これが〈Principles of Corporate Governance〉の中身ですが、

5番目には「Responsibilities of the board」(*6)というようなことも書かれ ているわけです。

それから、AIの世界で、これもOECDが、〈Values-based principles〉みたいなこと 書いていて、ここには、

・Inclusive, Growth, sustainable development and well-being とか、

・Human-centred values and fairness

・Transparency and explainability

・Robustness,security and safety

・Accountability

と、こんなようなものです。

・米国では、〈アシロマ原則〉(*7)なんてあります。

これ、イーロン・マスクが1000万ドルを寄付して、アシロマで16⁻17年に侃侃諤諤や った原則みたいなものもあるようです。

・総務省も、〔AIガイドライン比較表〕と、

〔比較表〕ですから、「どこがどう言っている、どう言っている」という表になっ ているので、勉強にはいいのですけど

”日本国で、AIについてはどう考えているか”、というのは、あるのか、ないの か、私は、そこまで詰めていませんが、

まあ、こんなものがある、と。

経団連も〈企業行動憲章〉で、こんな、「情報開示」とか「公正な事業慣行を」と か、こんなようなことを言っている、ということです。

それから、〈個人の徳目(Virtues)〉(*8)

というようなことで言いますと、

・古くは儒教で

〈五常の徳〉

「仁・義・礼・智・信」

とか、

・ギリシャでアリストテレスの

〈四つの枢要徳〉

「正義・勇気・知識・節制」

みたいな徳目があります。

それから、〈聖徳太子の十七条憲法〉。

これも、久しぶりにパラパラと読んでいますと、どうもこれは「官僚の心得」みた いなことが結構書かれていて、「統治、統一のための倫理」みたいなものですね。

日本では、「和を以て貴し(たつとし)と為す」ということが、すごく言われてい るのですが。

聖徳太子が書いたのは、どうも、十七条を見てみると、官僚どもを戒めている項目 が非常に多いですね。

これも、そうです。

それから、

新渡戸稲造が、〈武士道〉と言って、

世界に、”日本はこういう徳目だ”、と言ったのが、

・義

・勇

・仁

・礼

・誠

・名誉

・忠義

と、こんなようなことが、日本ではあるのだ、と、

こういうふうにおっしゃったわけでした。

あと、日本人の庶民はどんな徳目か? 、〈仏教〉もあるわけですが、 滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」というのが(江戸時代に)大流行したのですね。 これで、

〈八徳〉ということで、

「仁・義・礼・智・忠‣信・孝・悌」と、

こんなような、八犬伝で深く人口に膾炙(かいしゃ)したといわれております。

これ、岩田先生のところの「アスペン研究所」(*9)というところの、

世界の哲学界の巨人だった今道友信先生(*10)が、『エコエティカ』(*1 1)という本に書いているのですが、そこで、現代の徳目としては、

basicには

1.「勇気」

2.「忠」

3.「謙遜」

4.「責任 レスポンス」 「応答する Responsibility」

がある。

その他に、新しい徳目として、

5.「異邦人愛」

今、この「異邦人愛」っていうのは、これの逆が、「異邦人嫌い」とか、「異邦人 恐怖症」での「Xenophobia」(*12)、です。

これ、もう、アメリカ、ヨーロッパ全て西洋先進国で、移民に対する、アメリカの 場合、黒人に対する「Xenophobia」というのが、「異邦人嫌悪症」というか、「恐 怖症」というか、ですね。

今道先生は、”現代社会では、「異邦人愛」というものが重要だ”、と述べられて いました。

6.「定刻制」

”時間を守れ”、とか、

7.「国際性」

だとか、

8.「語学と機器の習得」

”語学をちゃんと習得しろ”、とか、

9.「気分転換」

”気分転換で音楽とか芸術を楽しめ”、と、

こういうようなことを、今道先生はおっしゃっておられるわけです。

それから、企業関係ではあるのですが、これちょっと「個人」じゃなかった、ごめ んなさい、「企業」のほうに移るべきですが、〈ISO 26000〉では、

やはり、こんなようなことも言っている。

というようなことで、

お見せしましたのは、別に私が解説するのではなくて、こんなことが、世界で、西 欧でも、東洋でも、それから、企業世界でも、ごにょごにょ、ごにょごにょ言われ てるのです。

さて、じゃあ、もう一度立ち返ってみて、

・「今、現代社会で普遍的価値って何なのだろうか?」と、

・「民主主義」、もう日本は、民主主義国家、

世界中は、建前は、どうも、さっき言いましたように、「民主主義」か、「Republi c」か、「民主制」と「Republic」、非常に境目が曖昧なのですが、あと、「立憲君 主制」ですよね。

加納先生が、「民主主義」と、「独裁」とか、「侵出覇権」「独裁主義」と言われ ました。

しかし、「独裁国家」も政治制度としては、必ずしも、「寡頭制」とか「王政」で はないわけで、制度的には、どうも「選挙」とか、”インチキ選挙”であっても、 「選挙」はやったりしているわけですね。

やはり私は、「民主主義」というのは一つの普遍的価値なのだろうと思うのです が、

・やっぱり、”壁がなくして成立しない”ということをどう考えるか? というような問題と、

やっぱり、「普遍的価値って何なのだろうな?」ということを、 ここで、結構議論されているのですが、改めて、真正面から、

「普遍的価値って何なのだろうな?」ということを、ちょっと議論をしてみたい な、と思って話題提供とさせていただきました。

以上です。

(*1)republic

republicとは

英語「republic」の意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書
「republic」の意味・翻訳・日本語 - 共和国、共和政体、(フランスの)共和制、(共通の目的を持つ人の)…社会、…界|Weblio英和・和英辞書

〈weblio〉

(*2)res publica

republic の語源

republic の意味、語源、由来・英語語源辞典・エティモンライン
republic の意味: 共和国; 公共の利益を重視した国家; 市民が選んだ代表者によって運営される国家...

〈Etymonline〉

レス・プブリカ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%9 6%E3%83%AA%E3%82%AB

〈Wikipedia〉

res publicaと共和国

三 森 のぞみ

https://waseda.repo.nii.ac.jp/record/77663/files/WasedaDaigakuItariaKenkyuj oKenkyuKiyo_12_4.pdf

〈waseda.repo〉

近代のフランス政治思想における共和主義 ―モンテスキュー、ルソーとトクヴィル ―

中谷 猛

https://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/kotoba03/nakatani.pdf 〈立命館大学〉

(*3)res privata

patrimonium and res privata

https://oxfordre.com/classics/display/10.1093/acrefore/9780199381135.001.00 01/acrefore-9780199381135-e-4783

〈Oxford classical dictionary〉

(*4)privateの語源

private の語源

private の意味、語源、由来・英語語源辞典・エティモンライン
private の意味: 私的な; 個人的な; 公にされていない...

〈etymonline〉

プライベート

Privatus - Wikipedia

〈Wikipedia〉

(*5) Principles of Corporate Governance

G20/OECD Principles of Corporate Governance 2023

https://www.oecd.org/en/publications/g20-oecd-principles-of-corporate-gover nance-2023_ed750b30-en.html

〈OECD〉

(*6) The responsibilities of the board

The responsibilities of the board

https://www.oecd-ilibrary.org/sites/ed750b30-en/1/2/5/index.html?itemId=/co ntent/publication/ed750b30-en&_csp_=7a1eca165fad928a70a0300d1e07c36f&itemIG O=oecd&itemContentType=book

〈oecd-ilibrary〉

(*7)アシロマA原則

AIの脅威を防ぐ「アシロマAI 23原則」とは?その内容や重要性をわかりやすく解 説!

https://data.wingarc.com/the-asilomar-ai-principles-62350 〈データの時間〉

アシロマの原則

https://futureoflife.org/open-letter/ai-principles-japanese/ 〈future of life〉

(*8) virtues

virtuesの意味・使い方・読み方 | Weblio英和辞書
「virtues」の意味・翻訳・日本語 - virtueの複数形。徳、 美徳、 徳行、 善行|Weblio英和・和英辞書

〈weblio〉

(*8)アスペン研究所

理事長メッセージ - 日本アスペン研究所
本アスペン研究所の設立背景や活動理念を紹介するページです。「ゲーテ生誕200年祭」に端を発するアスペン精神の起源から、ロバート・ハッチンスによる「対話の文明を求めて」のメッセージ、理事長の北山禎介氏によるリーダーシップと対話の重要性に関するメッセージも掲載されています。

〈一社 日本アスペン研究所〉

(*9)今道友信氏

今道友信

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8A%E9%81%93%E5%8F%8B%E4%BF%A1 〈Wikipedia〉

(*10)エコエティカ

エコエティカ

『エコエティカ』(今道 友信) 製品詳細 講談社
今日、生命倫理や医の倫理、環境倫理や技術倫理など、すべての分野で倫理が問い直されている。エコエティカとは、これら一切を含む「人類の生息圏の規模で考える倫理」のことで、高度技術社会の中で人間の生き方を考え直そうとする新しい哲学である。人間のエコロジカルな変化に対応する徳目とは何か。よく生きるとはどういうことか。今こそエコ...

〈講談社Book俱楽部〉

(*11) ゼノフォビア(Xenophobia)

外国人嫌悪

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E5%AB%8C%E6%82%A A

〈Wikipedia〉

外国人の人権と教育(その3) ゼノフォビアとしての外国人差別 https://www.nichibun-g.co.jp/data/web-magazine/manabito/jinken/jinken018/ 〈日本文教出版〉

 

 

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