西田純氏
今日はですね、「農業サーキュラーエコノミーへの期待について」ということでお時間を頂戴いたします。
”期待でワクワク、胸いっぱい”、みたいな話になってると、とってもオメデタイんですが・・
もちろんそういう要素はあります。ありますが、”果たしてそんなに思いっきり期待していいのか?”、っていう部分も併せて共有させていただけたら、ということでございます。
談論風爽、あるいは、CE-MVC(広域マルチバリュー循環 Multi-value Circylation)の周辺で議論されるサーキュラーエコノミーについてはですね、非常に、何というか政策的な調整も活発になされ、それを踏まえた議論というところに行ってると思うのですが、
「農業」に関してちょっと見ますとですね、若干これ、見てくれが違う、っていうところから、まず今日はお話を共有させていただきたいと思います。
私、コンサルタントとしてですね、農業案件を二件ほど面倒見させていただいてまして、その中でですね、サーキュラーエコノミーということへの関心を、つぶさに拾ってきますとですね、どうもやっぱりちょっと、「金属」や「プラスチック」とは見えるものが違う、ということはとても感じるわけであります。
拠り所とするのはですね、経産省の『循環経済ビジョン2020』という、皆さんご存知だと思うんですけども、エレンマッカーサー財団のですね、『バタフライダイアグラム』の中の右っ側と言いますか、
「枯渇性資源」についての何か取り扱いみたいなものを可視化した政策がございまして、
今、結構な追い風を感じてるのはですね、今年になって、これに新たにですね、
「バイオものづくり」っていうのが取り込まれたんですね政策的に。
これはも今日お話するような、”コンポストで肥料を作る” みたいな話からすると、結構いい感じの話なんですけれども、
肝心要(かなめ)のですね、農水省の方がちょっと角度が違ってまして、
『みどりの食料システム戦略』っていうのが、今、政策的な”一丁目一番地”に当たるものだと理解をしていますが、その中におけるサーキュラーエコノミーはですね、農水省的に言うと、
「これはヨーロッパがやってることだよね!?」という”お断り書き”が書いてあります。
”断り書き”が書いてあるんですが、「じゃあ日本はどうするんだ」ってのは、ほぼほぼ、何というか、スルーされてまして、”日本農業かくあるべし”、みたいな話が、あああでもない、こうでもない、というようなことが書いてあるんですけど、
どうもですね、メーカーにそういう文書があるわけではないんですが、農水省の言うことを汲み取るとですね、「いや、日本農業ってのはそもそも循環的なんだよ」というスタンスがですね、非常に見えるんですね。
ですので、農水省の政策の中でですね、何か「資源循環」あるいは「価値の循環」みたいなものをですね、きっちりと政策に則したした形で提案していく、っていうのが、なんか今、”居心地が悪い”ような状態だったりするわけであります。
これがですね、私の元々の話でいうと、SDGsなんかですと、内閣府に〈SDGs推進本部〉があって、内閣総理大臣が本部長で、いわゆる「省庁横断型」のですね、「政策的な枠組みの中での調整」みたいなこともですね、十分入ってくるんですけど、
サーキュラーエコニミーに関してですね、これをなんか、経産省、農水省両方二網で?やったときに、調整的なアクションが取れるか?というと、必ずしもそこのところはですね、今、”よし、これだ!”、っていう明快なものが見えてるわけではない状態であります。
なんでかな?、っていうことでですね、
”そもそも、やっぱり肌合いが違うよね”、ってすごく感じてるので、象徴的に写真でご紹介しますけど、左側ですね、今から工場のラインで研修を受けるであろう若者たちがですね、お揃いの新品の制服、作業服をですね、着て、”さあこれからだ”という場面の写真なわけですが、
それに比べますとですね、右っ側はですね、農業者。
やはり若者の集まりなんですけど、もうご覧いただければお分かりの通り、着てるものからしてバラバラなんですよ。
かつては部活動で着てたようなジャージみたいなものを着てる人もいればですね、古くなったズボンをそのまま農作業に(と、着てる人もいる。)
だからこれが循環性みたいなものかもしれないんですけど、
だいぶその肌合いの差というのは、農業と工業、そもそもがあるよ、っていうふうに感じていまして、
私の接点からですね、見える「農業」って
「農業は循環的だ!」
そうかもしれませんけど、”言うほど循環的なのかな?”、ってちょっと思ってるところが実はあります。
例えばオフィスの中古家具ですね。今、コロナでたくさんの中古家具が余って、売りに出てる、と。それを畑の作業台としてですね、農家さんは非常に重宝してくれるらしいんですね。
そこに関しては循環と言えば循環なのかもしれませんけど、畑の作業台として売れていった中古家具がさらに循環するっていうわけでは、多分全然なくてですね、そういう目で見ていると、
例えば農業資材の多くもですね、結構なものが使い捨てなわけですね。
使い捨てぐらいだったらまだかわいいんですけど、知られていない歴史的な「負の事実」として、
日本は割と砂地の保水性の悪い土地まで一生懸命頑張って農地にしてきた歴史があるんですが、
ここではですね、保水剤として、細かく刻んだプラスチックをですね、田んぼや畑に広く撒く、ということが長年実践されてきたっていう実績がある。未だにこれ法律で生きてまして、プラスチック片をたくさん撒くことはOKなんですけど、さすがに、昨今のですね、事情に配慮してだと思うんですけど、令和3年、去年からですかね、「生分解性プラスチックであること」みたいなですね、指導がなされてるということです。
ということは、逆に言うと、過去何十年間はですね、ごく普通のプラスチック片がですね、ひたすら畑とかに撒かれてた、っていう、それはすごいな、と感じるのは私だけでしょうかね??
次行きますと、「循環型農業」って言われてます、言われてるんですけど、実践はですね、やはり一部にとどまってまして、
基本的には、『「農薬」「化学肥料」「プラスチック」の3点セット』みたいな形でですね、これを普通にいっぱい使ってるのは、農業の残念ながら現状と言わざるを得ないところであります。
「有機農業」というのが注目されてて、今、農水省もこの有機農業をぜひ前へ進めたい、っていうことでやってるんですけど、実践されてらっしゃる方がやっぱり指摘されるのはですね、”非常に難しい”と。
一つには、「堆肥が完熟してないと腐敗が起きる」と。
そして、この腐敗が伝播したりなんかしてですね、なかなか、それをじゃあ「どうやって完熟かそうでないのかをちゃんと見極めるか?」とかですね。
あとはですね、病害が発生するらしいです。
この病害こそ非常にいやらしくてですね、病害が発生したことを、例えばですけど、”あんまり知られたくない”、みたいなマインドセットがですね、やっぱりあったりすると、そこだけで止め(とどめ)られればいいんですけど、結果としてその対策がさらに後手に回ったりすることも過去にはあった、と。
有機農業一般のですね、腐敗問題、病害問題にとどまらない、いわゆる「管理技術」、
”マメに~~をしなきゃいけない”的なものがあってですね、”やっぱり有機農業って難しいよね”、と。
この「難しさ」はですね、「循環性の浸透を阻害している」という側面もあるといえばあるのかな、と思っているんですけれども。
そこにですね、〈サーキュラーエコノミー〉という概念を入れてきますとですね、
”それが解決できるんじゃないですか”、という提案があるわけです。
これ「コンポストやってらっしゃる肥料屋さんからの提案」ということになるわけなんですけど、
コンポストのトレーサビリティの向上をしたとしてですね、
”病害対策ということで、これ、数値化できるんでしょうかね?”、みたいな話っていうのはなかなか突き詰められていませんで、未だその「イメージ」、もしくは、なけなしのですね、ほんのちょっと、どこか「テスト歩上でやってみたその実績の数値」みたいなもので説明を何とかかろうじてこなしてる、っていう段階、というふうに理解をしております。
あとですね、肥料の質を上げたいんですが、上げるときにですね、牛糞、鶏糞、豚糞、みたいなものをですね、使っていければ、っていう潜在的なニーズがあるんですが、これがなかなか進まないのはですね、抗生物質が餌に混ぜられてたりするわけですね。
これもですね、閉じた循環で餌を供給できればですね、もしくは、その衛生環境を整えればですね、「脱抗生物質化」によって鶏糞牛糞のですね、その使い勝手をより高めた堆肥として高められるんじゃないか、っていう議論もあるんですね。そうするとその堆肥は高品質。
これもですね、”データで証明できるか?”、みたいな話で、そもそも、今までそういうことを大々的にやってきた事例があまりないので、”だからぜひやってみましょうよ!”、っていうところから一歩も進んでない、っていう感じなんですね。
それ以外にもですね、”循環性を向上させましょう”となったときに、意外とその解決策がないのは「臭い(ニオイ)」でありまして、皆さんご想像いただけると思うんですけど、堆肥に動物の排泄物なんかを使おうとすると、やっぱり「臭い」の対策というのは非常に大変だというのがあったりするんですね。
あとその廃棄物屋さんのロジックだけから言うとですね、「有機汚泥みたいなものから作られた肥料」、これちゃんとそういうカテゴリーがあって、
有機JASでもですね、「汚泥由来肥料」っていう認証を受けられるんですが、実はこの「汚泥由来」っていうのは、農家にはすごく不人気でですね、特に食べるものを作るのに、”「汚泥由来」はうちは使わないからね!”、っていう農家さんが圧倒的だと。だから、基本「普通肥料」でないと使わない、ということなんですね。
それ以外にもですね、例えば「残飯由来」の塩分が高いと、なかなか、”悪さをする”とかですね、その他の「えっ」というような混入物がやはり入ってきてしまうようなことも。
これもですね、”「トレーサビリティ向上」で防げますよ”、っていうのが、肥料屋さんのですね、サーキュラーエコニミーを提案されるときの”もの言い”ではあるんですけれど、ちょっとその辺りがですね、まだ農家さんの理解を十分に得られていない、っていう、今状況だと、残念ながら申し上げざるを得ないところであります。
これがですね、今私が関与してる二件のうちの一件なんですけど、写真がたくさん、書いてある右っ側の方ですね、これがですね、いわゆるコンポスト屋さんのポジションで、今回ですね、”一緒にやろう”、っていう話が成り立ったのは、名前を言えば皆さんよくご存知の大手マヨネーズメーカーさんですね。
大手マヨネーズメーカーさんからですね、出てくる「卵殻」ですとか、あと「茹で卵の炭化物」みたいなものがですね、高品質な有機肥料の材料にもなります、と。
そして、そこから出てきた「高品質な肥料で作った有機野菜」とかですね、「飼料米」はですね、鶏(ニワトリ)さんに行きましてですね、ここもちゃんとトレーサビリティで担保されますので、抗生物質の量をぐっと減らしてですね、
そうすると、その鶏糞がさらに有機肥料に回るので、”有機肥料の質がぐっと上がる”と。
ですので、この肥料屋さんはですね、こういうその、まさにこれ ?も進みつつあるわけなんですが、事業をですね、どんどん前へ進めていきたい、と。
『持続可能な食と農の循環システムの実現』というのが彼らの言い方ですが、だいぶ前向きなわけであります。
これに期待していいいのかな、っていうぐらいの、若干、
私もですね、もちろんぜひ期待したいと思ってるんですけど、いわゆる食品メーカーさんや肥料メーカーさんによる取り組みですね、これがやはりすごい先行してるな、という感覚です。
その中ですね、CO2削減に関する議論ってちょっと微弱でありまして、まあ、それでも、まあいいやと、これがちゃんと回って行ってですね、循環がより広範囲にですね、ウェルビーイングに繋がるような動きであるならば、それをお手伝いするのは私としても全くやぶさかではないわけですけれど、
ただこの循環の提案はですね、お気づきかと思うんすが、”農家発”では全然ないわけです。
いいものはいいっていう整理で、農家さん的にも問題なければいいんですけど、
結局その食料メーカー、食品メーカー、肥料メーカーさんの論理で、今創られつつあって、彼らにSDGsみたいなものをきちっと立てていただければですね、気がついてみれば、食品メーカー、肥料メーカーさんだけが、メリットを受ける、っていうような絵は予防し得るんだろうな、と思ってはいるんですけれど。
この今の絵をですね、進めていきますと、有機肥料は確かに「高付加価値化するでしょう」と、「循環性も高まるでしょう」と。
ただ、その「トレーサビリティ」でですね、有機農業の難しさって、今の絵姿を実践すればそれが緩和されることに繋がるのかな?と、まあ、繋げられるように持ってかなきゃいかんな、と思ってるわけですけど、それの結果、「腐敗とか病害が改善される」って”期待”はあります。
ただ、”どこまで、果たして期待していいものかな?”、ってことに関しての、私なりの定量的な肌感覚は、”平たく言うと無い”わけであります。
無いんです。だって先行事例が無いので仕方ないんすけど。
これを一歩ずつ進めながらですね、最終的には農家さんも含めた循環全体がハッピーになったらいいなあ、と。
その淡い期待というか、非常にアンプロフェッショナルなですね、期待の中、この農業案件に関しては取り組ませていただいているという状況であります。
ですので、「きちっと数値で把握できて」「CO2で見える化できて」っていう、
金属とかですねプラスチックもあり得るのかもしれませんが、そういう方面の方々とお付き合いしていたときに比べると、非常にその、”お尻の据わりの気持ち悪いような”状態でですね、
それでもお付き合いいただいているので、二社さんとはお付き合いをさせていただいてる、というのがコンサルタント西田の今日(こんにち)でありました。
情報共有のみに止(とど)まってるところもありますが、今の私のですね、モノローグに対して、先生方からのですね、コメントなり、ご質問なり、折角の機会ですので、受けさせていただけたらと思います。
本日は以上でございます。
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