2008年1月に発表し、その後小型家電リサイクルや東京オリンピック・パラリンピックの都市鉱山メダルなど大きな影響を与えた「我が国の都市鉱山蓄積ポテンシャル」ですが、最新のデータに対する問い合わせをよく受けます。そこで、最新の産業連関表とマテリアルフロー情報を用いて、2008年発表(データは2007年)の都市鉱山蓄積の2020年版を計算したので、公開します。
2008年版は、その後日本金属学会誌に「都市鉱山蓄積ポテンシャルの推定」として査読論文化サれていますが、今回は論文化によるレビューは考えていませんので、計算のエクセルデータも直接ダウンロードできるようにしています。興味のある方や疑義のある方は参考にしてください。
結果ですが、残念ながら、日本経済の衰勢の中で以前の状態から大きく後退し、「世界の誇る」とは言いにくい状態になってきています。しかし、これが現実ですし、リサイクルによる国内資源利用はまだまだ不十分でかつその重要性は変わらないので、引き続き都市鉱山開発を進めていくことは重要です。
まず、2008年以降の、都市鉱山蓄積の推移を示します。
2007年の蓄積量を1としたときの変化です。増加しているグループが、Co,W,Moで減少しているグループは、Au,Ag,In,Ta、のこりはほぼ微増というところです。
減少しているのは、リサイクルが進んだからではなく、輸出による海外流出が多くなったからです。
この結果、2019年までの都市鉱山蓄積は、次のグラフのようになります。
全体としては、大きな変化はありませんが、金、銀、タンタルの減少が目立ちます。
これを2008年のように、世界の年間消費量および世界の埋蔵量と比較しました。
世界の経済が拡張しているのに対して、日本がおいてけ堀にはまりつつあり過去の遺産を絞り出している姿が伺える結果とも言えます。2008年の「我が国の都市鉱山蓄積」が大きな反響を読んだ理由の一つには、予想以上に国内への蓄積が大きなウエイトを締めていたということがあったと思いますが、それから20年の変化はその国内蓄積が弱くなってきていてる現状を反映している下の思われます。
とはいえ、この国内蓄積量の殆どはまだ眠っており、「天然埋蔵量」のように資産として数えるレベルにも至っていません。経済が厳しくなっているかにこそ、国内の眠った資産をリサイクルできちんと活用することが重要になってきます。
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