「2050年カーボンニュートラルを始めとした持続可能な社会に向け、循環経済を最大限利用した循環型社会の将来像及びそのアプローチに対する意見の募集について」の意見

 

中央環境審議会循環型社会部会事務局御中

「2050年カーボンニュートラルを始めとした持続可能な社会に向け、循環経済を最大限利用した循環型社会の将来像及びそのアプローチに対する意見の募集について」の意見

 

2022年2月28日

サーキュラー・エコノミー&広域マルチバリュー循環研究会
   事務局 (一社)サステイナビリティ技術設計機構

[氏名]サーキュラー・エコノミー&広域マルチバリュー循環研究会 提言委員会
代表 原田幸明
[郵便番号・住所]〒305-0035 茨城県つくば市松代5-2-34
[電話番号]029-846-5505  [電子メールアドレス]mvc@susdi.org

[意見] 

この文章は2022年1月18日に環境省環境再生・資源循環局総務課循環型社会推進室より出された、「2050年 カーボンニュートラルを始めとした 持続可能な社会 に向け 、循環経済を最大限利用した循環型社会の 将来像及びそのアプローチに対する 意見の募集について」に対して、本研究会提言委員会より意見を提出するものである。

なお、本研究会では、「循環経済」という表現は、我が国の施策として推進されてきた「循環型社会」との混同を与えるものとして使用を避けており、原語通りのサーキュラー・エコノミーを使用している。

質問1

2050 年カーボンニュートラルを始めとした持続可能な社会の構築に向けて、製造、流通、販売、消費・使用、廃棄等のライフサイクル全般での適正な資源循環の取組(天然資源の消費抑制や環境への負荷低減の取組を含む。)の必要性についてどのように考えますか

カーボンニュートラルを始めとした持続可能社会の構築に向けて、サーキュラー・エコノミーはそれを推進する社会・経済の行動指針として必要不可欠であることは言うまでもないが、質問自体が「資源循環」という部分的な問題としか捉えておらず、世界的なサーキュラー・エコノミーの取り組みに対して異質なアプローチとなっている。
世界の議論は、現在下図のようなサーキュラー・エコノミーの位置づけにまとまりつつある。

すなわち、①サーキュラー・エコノミーは環境側面だけでなく「経済」「社会」「環境」の3つの領域に持続可能社会に向けてのソリューションを与えるものであるという総合的視点だの問題解決性が求められており、②そのためには、従来のフロー改善だけでなく、資源の価値を「保持」し、「再生」し、「創生」するという行動推進が求められている、という認識である。

それに対し、この意見募集の補助資料および、この質問1自体が、先述の図では右側の項目に当たる「資源フローの改善」にのみ関心が絞り込まれており、これだけでは、資源の価値を「保持・再生・創生」することが「経済・社会・環境」に対して持続可能な社会への推進行為となるという認識と大きく異なっている。早急に、サーキュラー・エコノミーを「資源フローの改善」と「環境負荷低減の取り組み」の枠の中に閉じ込めることをやめ、「経済・社会・環境」にソリューションを与える価値の「保持・再生・創生」の立場に立つことが、カーボンニュートラルを始めとした持続可能な社会の構築に向けて緊急に必要である。

すなわち、日本の循環型社会推進の取り組みは「資源フローの改善」という意味では世界的にも先行する大きな前進の側面があるが、それだけではカーボンニュートラルを始めとした持続可能な社会の構築に向けては応えるには不十分であり、サーキュラー・エコノミーで強調されている資源価値の「保持・再生・創生」の取り組みを強めることが必要である。

質問2

我が国においては、これまで3R(リデュース・リユース・リサイクル)の取組を積み上げてきたところですが、 近年、シェアリングやサブスクといった新たなビジネスモデルが台頭してきています。 循環経済の取組を企業の本業 や様々な主体 の取組として実施し、さらに深化させ、社会全体に拡大させていくには、どのような取組が考えられますか。

これらのビジネスモデルは一定規模(クリティカルマス)以上にならないと経済効率が不十分のため、成り立ちにくい性質があり、資源効率も劣る場合もある。さらに、従来のビジネスモデルとは、ユーザーの意思決定プロセスが異なる場合もあり、相互にコスト効率を比較するのも困難であるため、これらの問題を解決しないと普及・育成が進まない側面がある。

そのため、これらのビジネスモデルを普及・育成するために、下記に示す政策・施策を実施することが有効と考える。

 

(1) 売切りからサービス化 ・機能売りへの転換を推進する政策
これらのビジネスモデルと売切り商品とのコスト比較を可能とするLCCを開発・普及。
公共グリーン調達におけるサービス化 ・機能売り商品の購入の推進。

(2) ライフサイクル管理システムの構築・実施を推進する政策
製品メーカーには製品・部品の長期保証を法律で義務付ける。
モジュール・コンポーネントごとに入替可能な製品設計を要請する。
EUのDPP(デジタルプロダクトパスポート)のような制度を導入した製品個体管理のデジタル技術を用いた容易化。
製品修理サービスに対する優遇措置の実施。

(3) サービス媒体となる物品に対するサイクル設計製品利用の推進再生材の利用
製造における素材の統一化の促進
同じ種類の機器や製品を作る事業者間における統一化も規格化の促進
再生材規格の策定などサービスプロバイダー間の再生材利用推進

(4) DXによる製品・資源の循環利用を推進する政策
循環型DXビジネスの基礎となるデジタルインフラの開発・整備

(5) 故障・廃棄の事前対策を推進する政策
これらのビジネスモデルにおけるRRRDr実施体制、回収・リサイクルルートの設定・整備を促進する制度設計

(6) サービサイジングに伴う物質の循環や効率的利用促進の明示可能な評価手法の開発と採用、とそのサプライチェーン物質管理ツールの準備

(7) 提供者における循環利用に向けたマインドセット構築の推進

(8) 輸入等の多様な物品提供者に対応しうる管理と循環体制の確立の促進

(9) 使用者における循環利用に向けたマインドセット構築の推進

取り分けて、新規政策として以下の点を検討していただきたい。

  1. 省庁横断、省内横断の「サーキュラー・エコノミー推進会議」(環境再生・資源循環、環境経済、化学物質、経産省、農水省、デジタル庁、消費者庁など)
  2. リマン・修理等機器寿命の延命行為に対する消費税減税の検討
  3. 稼働率を考慮に入れた新しいライフサイクル・コスト効率の評価手法の開発
  4. 循環が重要な原材料および資源循環の障害となる化学物質の製品含有情報を伝達するシステムの構築。そのために既存のシステムを横断的に活用することの検討。(例えばchemSHERPA等)
  5. グリーン調達における、購入者側の情報活用を重視し、率先行動を促進する施策
  1. 横断的取り組みは、サーキュラー・エコノミーに向けてのシステム改善の大原則であり、シェアリング、サービサイジング等の新ビジネスモデルの推進を意図するのであるならば、まず隗よりデジタル庁、消費者庁等を含む横断的取り組みに着手すべきである。
  2. ライフサイクル管理システムの構築・実施を推進するには、製品修理サービスに対する優遇措置はその一つの重要な施策であるが、その中でかかる経済行為に対する消費税減税のフィージビリティを検討していただきたい。
  3. 現在のライフサイクルの考え方は「稼働」ではなく「製品寿命」を機能単位としているものが多く、サービサイジングの評価になじみにくい。アカデミーと協力して、新たなビジネスモデルに適合したLCCやLCAの評価手法を開発しそいようすべきである。なお、欧州では「寿命」ではなくoccupation(従事)を基本として考える資源効率評価手法が議論されている。
  4. EUではサーキュラー・エコノミー行動計画の重点分野としてCRM(Critical Row Material)を定め、サプライチェーン管理により調達リスクの低減を進めている。日本を含めた自動車業界がGADSLのリストにCRMを追加した。日本でも、その対応のために製品含有化学物質伝達スキームであるchemSHERPAにEUのCRMを情報伝達の対象リストに追加し管理しており、日本でも活用し管理すべきである。
      また、EUでは材料の再生や再資源化の障害となるとされるREACHで定めるSVHC(高懸念物質)を含有する成型品の情報をSCIP(Substances of Concern In articles as such or in complex objects(Products))データベースにより整備を進めている。日本企業もEU域内に成型品を上市する際はSCIPデータベースへの登録を進めている。日本企業は前述のchemSHERPAにより、成型品を構成する部品等のサプライヤとも連携して対応を進めている。日本においても再生や再資源化の障害になる物質の含有情報を見えるようにし、適切に再生や再資源化が進むようにする必要がある。
  5. 「循環型社会を形成するための法体系」にグリーン購入法が「国が率先して再生品などの調達を推進」と位置付けられており、基本方針に「環境物品等に関する情報の活用と提供」が示されている。政府等の購入者が、製品の資源循環に関する情報を基に評価・判断し購入することが重要である。米国では、再生品については包括的再生品購入ガイドライン(CPG)の中で再生品やリサイクル品として購入すべき品目の最低基準を定めており、環境ラベルやEPEATなどの民間の仕組みも推奨されている。EPEATでは、使用済み再生プラスチック含有量の開示や含有率の基準が設けられている。政府調達における再生材料の利用率の目標設定などによる、政府および独立行政法人等の物品の購入にあたり、再生材料等の含有率の高い商品やと長期使用できる製品・サービスを評価・判断し率先購入制度が望まれる。

質問3

第四次循環基本計画では、環境的側面だけでなく、経済的側面や社会的側面も含め、これらを統合的に向上させていくことを目指した関連施策を盛り込んでいるところです。循環経済の取組を推進することになり、かつ、 福祉や教育、貧困を始めとした「持続可能な開発目標」 SDGs の実現にも貢献する取組として、どのようなものが考えられますか。

 各論は多数あるだろうが、サーキュラー・エコノミーとはなにか、それを目指して何をすべきかが明確にならねば、各論も生きない。周知のようにエレンマッカーサー財団は、

  • DESIGN OUT WASTE AND POLLUTION
廃棄物や汚染を生み出さない設計(デザイン)を行う
  • KEEP PRODUCTS AND MATERIALS IN USE
製品や原材料を使い続ける
  • REGENERATE NATURAL SYSTEMS
自然のシステムを再生する

を明確にかかげて、そこから、行動指針を打ち出している。

我が国においても、サーキュラー・エコノミーとは何をするのかを、従来の循環型社会形成推進と混乱せず、かつその成果が国民の確信となる形で、明確にすることが、いかなる具体的施策よりも、サーキュラー・エコノミーを持続可能な開発目標」 SDGs の実現にも貢献する取組とするために不可欠である。

その一案として、次のかたちでサーキュラー・エコノミーの理念を明確にし、SDGsとも関連付けることを提案する。

SDGsを推進するサーキュラー・エコノミー

 

  1. 自然の恵みを享受し、自然に負担を与えない資源の利用を行おう。
    1.1  持続可能な資源利用を行おう     (12使う責任)  (6水)
     1.2 自然資本を活かせる産業を拡大しよう  (14海)(15陸)(7エネ) 1.3 廃棄物・人工発生物とそれによる環境汚染ゼロを目指そう (3健康)(13気候) 
  2. 限られた資源をみんなで豊かに活用できる経済・社会を作ろう
    2.1 不要になったものも、必要な人の役に立てる経済と社会を (10平等)(1飢餓)(2貧困)

    2.2 共有できるものは共有してみんなで豊かさを分かち合える経済と社会を (1飢餓)(2貧困) (10平等)((11まちづくり)2.3 「もつこと」ではなく「つかうこと」が大切になる経済を      (10平等)(1飢餓)(2貧困)(9産業)2.4 モノそのものではなくそこに込められた匠と心が生き交える経済・社会を (9産業)(8働き)(4教育)(5ジェンダー)
  1. みんなの協力と「わ」(和、輪、環、話)をちからに目標に向かって進もう     (17パートナー)(16平和) (4教育)(5ジェンダー)

 

環境省パプコメCE-MVC20220228f

最近の投稿

新着記事

再資源化高度化法案 閣議決定

2024年3月15日、日本の環境省は「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度 ...

24年4月18日 サーキュラーエコノミー&広域マルチバリュー循環(CE-MVC)研究会 年会六周年記念公開シンポジウム

サーキュラーエコノミー&広域マルチバリュー循環(CE-MVC)研究会 年会六周年 ...

ネット・ゼロ時代のグリーン・ディール産業計画

2023年2月1日にEU委員会から発表された「ネット・ゼロ時代のグリーン・ディー ...

2023日本スウエーデンラウンドテーブルの報告書

2023年10月16日株式会社オシンテックの主催で、サーキュラーエコノミー広域マ ...